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タイトル 世界の舞台芸術の拠点〜富山県利賀芸術公園〜
施策・事業名称 「舞台芸術特区TOGA」における世界の舞台芸術の拠点づくり
都道府県名 富山県
分野 教育・文化
内容 1 これまでの歩みと利賀芸術公園の設立等の経緯
(1)利賀村と世界的演劇人との出会い
昭和51(1976)年、鈴木忠志氏が率いる早稲田小劇場(現SCOT)が利賀村の合掌文化村一帯(富山県利賀村上百瀬地区…現、利賀芸術公園)を演劇活動の本拠地として東京から過疎の村へ場を移し活動を始めた。「東京一極集中では文化は枯渇していく。新たな可能性は地域にある。」との考えからであった。当時の鈴木氏は、岩波ホール芸術監督などの活躍や、フランス政府主催の演劇祭に招待され、ヨーロッパに衝撃を与えるなど、既に世界的存在であった。
(2)地域振興策としての演劇
当時、利賀村は、演劇活動を過疎対策として位置付け、積極的に文化行政として取り組み、また、早稲田小劇場も文化的視野から利賀村の過疎対策に協力するなど、利賀村と劇団の関係は、それぞれの立場で過疎対策・芸術文化活動を共に進める関係に発展していった。
(3)世界演劇祭「利賀フェスティバル」
昭和57(1982)年に日本初の世界演劇祭の開催のため、(財)国際舞台芸術研究所(理事長鈴木忠志氏:県教育委員会許可)が設立され、「日本は東京だけでない、世界は日本だけでない、この利賀村で世界に出会う」をスローガンに世界演劇祭「利賀フェスティバル」が開催された。合掌造り家屋を改造し舞台芸術空間として生まれ変わった劇場「利賀山房」やギリシャ風「野外劇場」などを舞台に繰り広げられる舞台芸術は、その質の高さから国内外で高い評価を受け、過疎の村は世界各国からの劇団・観客で賑わい、『演劇の利賀』として一躍有名になった。以来30年余り、諸外国からは、「演劇の聖地」とまで言われるようになっている。
(4)スズキ・メソッド
「利賀フェスティバル」と同時に「スズキ・メソッド(※1)」という鈴木忠志氏が編み出した独自の俳優訓練法を教える「国際演劇夏期大学」やカリフォルニア大学などの共同事業「UCSDサマースクール」など演劇専門の国際人材育成プログラムが利賀村で実施されてきた。
(5)「利賀芸術公園」の県立化
平成6(1994)年7月に竣工した合掌造り劇場「新利賀山房」の完成を機に、劇場などの県立化や通年利用を図ることなどが検討され、その結果、平成6(1994)年10月に一帯は、富山県立の芸術公園として位置づけられ、演劇などの芸術文化活動の国内外における一大拠点となるよう整備活用が進められてきた。
(6)新たな事業展開
平成11(1999)年、(財)国際舞台芸術研究所は、利賀フェスティバルにひと区切りをつけ、解散した。平成12(2000)年3月、新世紀の舞台芸術による地域振興をさらに推進する新たな財団法人として、自治省及び文部省の許可の(財)舞台芸術財団演劇人会議が利賀村に主たる事務所を置き、設立された。事業も利賀フェスティバルに替わり、日本初の「利賀演出家コンクール」や「利賀演劇塾」など舞台芸術の人材育成・発掘を主眼に置いた複数のプログラムを組み合わせ、現在は「利賀サマー・シーズン」として展開されている。平成23年4月、(財)舞台芸術財団演劇人会議は公益財団法人に移行し、令和2(2020)年6月には、(公財)利賀文化会議に名称変更した。
(7)町村合併と新たな展開
平成16(2004)年11月、利賀村は周辺8町村と合併し南砺市となった。これを受け、利賀芸術公園のあり方を再構築し、富山県と南砺市が連携協力のうえ、世界の演劇人が集う拠点、地域振興の拠点として、さらなる飛躍を図るものである。

*1 スズキ・メソッド
舞台俳優の基本は呼吸と下半身の集中力を養うことから始まる。日常生活のなかで退化させてしまった身体感覚を活性化することを目的とする、鈴木忠志氏によって創りだされた俳優のための訓練法。世界の劇団や大学等(ジュリアード音楽院、コロンビア大学他)で学ばれている。デラウェア大学ジェール・ウィーカー教授は『かつてアメリカの俳優訓練法の主流であったスタニスラフスキー・システムはリアリズム演劇のための方法であり、60年代以降の演劇には対応できなくなっている。スズキ・メソッドはこれに代わり、今アメリカで最も重要な俳優訓練法として多くの人に学ばれている。』と報告。

2 利賀芸術公園の新たな展開
利賀芸術公園は、世界演劇祭「利賀フェスティバル」の開催や、俳優訓練法スズキ・メソッドの本拠地として、国際的に「演劇の利賀」として知られ、世界一流の舞台芸術家が訪れる地として定着し愛されている。
昭和57(1982)年以来積み重ねられてきたこれまでの実績を活かし、平成18(1996)年からは、さらに国際的な舞台芸術人材育成などの専門的な創造・教育事業や「演劇の聖地」にふさわしい舞台芸術空間の創造など、世界の舞台芸術の拠点づくりに取り組んできた。
これにより各国から一流の舞台芸術家が集い、自由に創造・実践活動を行う世界演劇の拠点として、利賀から、より質の高い芸術文化を世界に発信するとともに、地域振興の拠点として合掌造りなどの伝統文化の保存や地域の活性化、国際交流の場としての発展などを目指すものである。
また、富山県南砺市利賀村から世界に向け一流の舞台芸術を創造発信することで、ひいては日本の舞台芸術の発展にも寄与することを目指すものである。
(1)アジアを代表する舞台芸術の拠点として
ア 利賀芸術公園のこれまでの舞台芸術における世界的な実績を活かし、利賀に主たる事務所を置く全国法人である(公財)利賀文化会議と協同し、全国でも初めての国際舞台芸術人材育成事業に取り組んでいる。
世界に誇る俳優訓練法スズキ・メソッドを学びに各国の舞台芸術家が集い、自由に創造・実践活動を行う世界演劇の拠点として世界に発信している。
イ また、利賀芸術公園には、利賀の文化や自然、歴史を活かした独特の合掌造り劇場や、美しい景観に溶け込むギリシャ風の野外劇場などがある。
これら合掌造り劇場等の舞台芸術空間は国際的に評価が高く、日本に数少ない舞台芸術専門の劇場として、世界に誇れる劇場空間といえる。利賀は、日本を代表する舞台芸術の拠点として世界に発信すべき場所であることから、その意味で演劇の聖地にふさわしい舞台芸術空間づくりを進める。
ウ 平成18(2006)年には、「日露文化フォーラム」(※2)を開催し、日露両国の文化庁長官をはじめ日露両国の文化人、政府関係者等に利賀芸術公園の舞台芸術を披露。利賀を世界の舞台芸術の拠点として、ロシアをはじめとする国内外に強烈にアピールしている。
エ 利賀では、昭和57(1982)年から平成11(1999)年まで「世界演劇祭利賀フェスティバル」が開催され、国際的に高い評価を得ている。このことから、国内外の強い要望を受け、平成17(2005)年から「世界演劇祭利賀フェスティバル」を復活させ、(公財)利賀文化会議と協同し、今後さらに「世界演劇の聖地」の演劇祭にふさわしい世界一流の舞台芸術家や劇団を招聘・上演し、利賀から世界最新の舞台芸術を発信している。
オ 利賀の優れた創造環境で行われている「利賀演劇人コンクール」では、21世紀の舞台芸術をリードする人材の支援・顕彰を行っており、才能ある演劇人を発掘しその活動を支援することで、人材育成の面でも成果をあげている。
また、平成24(2012)年からは、新たに「アジア演出家フェスティバル」を開催し、アジアの次代を担う演出家を顕彰し、その創作活動を継続的に支援することを目指している。
カ さらに、令和元(2019)年には、祭典史上初となる日本とロシアとの共同開催となった「第9回シアター・オリンピックス」の日本側の主会場となり、16の国・地域の世界第一線の演出家などによる舞台芸術が上演された。
キ これらの事業を積極的に支援し、世界一流の舞台芸術家が自由に集い、創造し、研鑽し、発信する、舞台芸術に関してあらゆる試みを可能とする世界演劇の拠点を創造する。

*2 日露文化フォーラム
平成13(2001)年の鈴木忠志氏とプーチン大統領との会談が契機となり、日露文化芸術の幅広い交流を促進しようとするロシア側の呼びかけにより平成16(2004)年6月に設立。日露両国の文化交流を通じた相互理解を深めることを目的とする。綿貫前衆議院議長が代表を努め、両国の政治家や舞台関係者が委員を構成する。演出家鈴木忠志氏や文化庁長官などが日本側委員。
(2)地域振興の拠点として
ア 利賀芸術公園特有の合掌造りを活かした劇場や施設群は、舞台
芸術空間として活かされるだけではなく、地域と連携し、茅葺屋
根の葺き替えや茅場の造成を行うことにより、地域の茅葺伝統文化の保存継承にも活かされている。近い将来、地場産業として発展する可能性も高く、伝統文化の保存とともに、地域の産業の再生・活性化、産業振興につなげたいと考えている。
イ 富山県南砺市は、世界遺産の相倉・菅沼合掌集落をはじめとする魅力的な観光資源や伝統文化を豊富に有する地域である。また、富山県は、雄大な立山連峰など世界に誇れる観光資源が豊かな県である。これら周辺地域も含めた、富山ならではの資源を活かした広域観光、国際観光の推進を併せて図っていく。
ウ さらに、青少年舞台芸術鑑賞会の開催や高校生の演劇講習会、学生ワークショップ、児童劇の創造など、これまで行ってきた事業をさらに拡大し、明日を担う青少年への舞台芸術の普及・教育活動についてもさらなる充実を図っていく。
エ プロジェクト推進には、新たなハード整備よりも既存の公共施設等の利用促進や周辺遊休施設の有効活用も必要である。また、事業運営には、地元民宿や商工会、NPOなど、地域のマンパワーの結集を求め、地域の活性化を図る。

3 舞台芸術特区TOGA
(1)規制の特例内容
劇場の芸術性をより高めるため、一定の安全性を確保することを条件に、誘導灯にかわる代替措置を可能とする(消防法)。
<規制緩和の提案の趣旨>
利賀芸術公園においては、劇場を「舞台芸術の創造・公演を行い、一般観客に提供し、舞台芸術創造に対する専門的支援を行い、舞台芸術の振興に資することを目的とする機関」と積極的に位置づけ、演出家等の専門家が創造能力をあますところなく発揮できる劇場としての環境を整え、国際舞台芸術人材育成等の事業に取り組み、一流の舞台芸術を富山から世界に発信することとしている。
その妨げとなる消防法、建築基準法等の諸規制の緩和・解除等の規制緩和を提案(平成17(2005)年6月提案)したところであり、現在のところ、消防法の規制緩和が認められている(平成18(2006)年3月認定)。
(2)規制の特例区域
富山県南砺市利賀村上百瀬地区一帯
関連
ホームページ
http://www.togapk.net/
本件問合先 生活環境文化部文化振興課
076-444-3455