政策個表

タイトル 心やすらぐ田園空間の創出と多面的機能の発揮
施策・事業名称 魚のゆりかご水田プロジェクト
都道府県名 滋賀県 本件問合先 滋賀県農政水産部 農村振興課 地域資源活用推進室
分野 農林水産 077-528-3963
gh01@shiga.pref.lg.jp
内容 ■取組の背景
かつて琵琶湖周辺の田んぼは、コイ、フナ、ナマズ等在来魚にとって格好の産卵繁殖の場であったが、同時にそこは、琵琶湖の水位変動の影響を受け易く浸水被害に見舞われたり、田舟などによる農作業を余儀なくされるなど、農業活動においては非常に不利な地域であった。
今日、琵琶湖総合開発やほ場整備事業などにより農業生産性の向上が図られたが、一方で、乾田化を目的として水田と排水路との間に大きな落差が設けられた結果、魚が水田へ遡上しにくくなり水田の魚類産卵繁殖機能は失われた。
滋賀県では、「みずすまし構想(平成8年策定)」に基づき、全国に先駆けて住民参加のもと農村地域の水質と生態系保全のための取組を進めており、平成13年度から、魚類の産卵繁殖の場としての水田を復活させるため「魚のゆりかご水田プロジェクト」に取組んできた。
■取組の経過
1 魚のゆりかご水田調査事業(平成13年度~平成17年度)
○水田の魚類産卵繁殖機能の確認(H13~H15)
田植後の水田にニゴロブナの親魚を放流し産卵させた結果、ふ化した稚魚はわずか1ケ月で遊泳力が備わる約2cmに成長し、中干し期に排水路に流下した。
また、水田の稚魚の成育状況について調査したところ、水田はエサとなるプランクトンが豊富で外敵が少ないため、生残率(稚魚数/産卵数)は平均で約30%、高いところでは約60%になるなど、水田が魚類産卵繁殖に適した環境であることがわかった。
○排水路堰上式水田魚道の確立(H16~17)
平成16年度に、排水路の水位を10cmずつ段階的に上げて水田と琵琶湖をつなぐ「排水路堰上式水田魚道」を考案し、米原市(旧近江町)と彦根市の農業排水路に間伐材を用いて試験設置した。2年にわたる実験により、フナ、コイ、ナマズ、タモロコ等多数の在来魚が、降雨のたびに産卵のため水田に遡上し、水田で大きく育った多数の稚魚が琵琶湖へ帰っていくことを確認し、普及に向けた魚道の基本的仕組みが確立できた。

2 魚のゆりかご水田環境直接支払パイロット事業(平成18年度)
魚のゆりかご水田を安定的・持続的な取組とするためには、従来の営農に加え、魚道の維持管理、魚類遡上・産卵・成育に必要な水田のきめ細かな水管理などの生態系維持保全活動が求められる。そこで、魚のゆりかご水田の本格実施にあたり、平成18年度には、魚道設置により琵琶湖から魚の遡上が可能となった水田を対象に、これらの活動にともなう「掛かり増し経費」に対する支援策として「魚のゆりかご水田環境直接支払パイロット事業」を創設し、取組の推進を図った。その結果、琵琶湖周辺の12集落において農業者と地域住民を中心に結成された活動組織が、約40haの水田で、魚のゆりかご水田の活動に取り組んだ。

3 世代をつなぐ農村まるごと保全向上対策の活用(平成19年度~)
平成19年度から始まった「農地・水・環境保全向上対策(現:多面的機能支払交付金、県事業名:世代をつなぐ農村まるごと保全向上対策)」を活用した取組が拡がり、令和2年度には、湖辺の143haの水田で取組まれている。
現在では、排水路堰上式水田魚道以外にも、一筆型魚道の設置も普及している。

■取組の成果
魚のゆりかご水田プロジェクトの取組は、生態系の再生だけでなく地域コミュニティの活性化など、「五方(生きもの、琵琶湖、子ども、農家、地域)によし」の効果を発揮している。
(1)生きものによし
平成18年度の調査で、20haの調査水田から中干し期に排水路に流下した稚魚は、約83万尾(重量より推定)との結果が得られるなど、水田は稚魚の成育に適した環境である。
(2)琵琶湖によし
代掻き期から中干し期にかけて排水路の水位を堰上げることにより、水田からの流出負荷量削減と用水量節減が図られている。
(3)子どもによし
地域の子どもたちが水田周辺で魚つかみや生きもの観察をするなど、生きものの生息地としての水田の価値を学習する機会を提供している。
(4)農家によし
魚にやさしい水田で作られた安全で安心なお米を『魚のゆりかご水田米』としてブランド化が図られている。
(5)地域によし
魚道設置や生きもの観察会などに多くの人が訪れることで、人と人とのコミュニケーションが生まれ、世代を超え、地域を超えた人々のにぎわいが生まれている。

■今後の展開
平成31年2月、琵琶湖やそれを取りまく環境に配慮した農林水産業が、「森・里・湖に育まれる漁業と農業が織りなす琵琶湖システム」として、日本農業遺産に認定され、現在、世界農業遺産認定に向け申請中である。
魚のゆりかご水田は、「琵琶湖システム」の中心をなす取り組みの一つであり、農業農村の持続性を図るため、活動組織や流通関係者、企業、学識経験者等で構成された「琵琶湖とつながる生きもの田んぼ物語協議会」を中心に魚道設置等にかかる現地指導等の支援をはじめ、「魚のゆりかご水田米」の県内外への情報発信による知名度向上、ブランド化による販売力の強化により、さらなる取組拡大を図っていく。
小学校による環境学習 魚のゆりかご水田米ロゴマーク
小学校による環境学習 魚のゆりかご水田米ロゴマーク
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