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タイトル 災害に強いまちづくり宮城モデルの構築 ~東日本大震災からの創造的復興~
施策・事業名称 災害に強いまちづくり宮城モデルの構築 ~東日本大震災からの創造的復興~
都道府県名 宮城県
分野 地域振興・まちづくり
事業実施期間 平成23年10月1日~
施策のポイント 宮城県では,今回の震災で得られた教訓を踏まえ,震災前の状態に戻す単なる復旧ではなく,将来を見据えた新しい日本のモデルとなるような県土づくりを目指し,美しいふるさと宮城の再生とさらなる発展に向けた取組を推進している。
県民の安全で安心な暮らしを支える社会資本整備においては,土木建築行政分野の部門別計画である宮城県社会資本再生・復興計画の基本理念として,「次世代に豊かさを引き継ぐことのできる持続可能な宮城の県土づくり」を掲げており,災害に対して粘り強い県土構造への転換を図るほか,高台移転,職住分離,多重防御による大津波対策など,沿岸防災の観点から被災教訓を活かした「災害に強いまちづくり宮城モデルの構築」に全力で取り組んでいる。

「災害に強いまちづくり宮城モデル」は,東日本大震災からの復旧・復興に係る施策を端的に示したものであり,「安心安全なまちづくり」,「災害に強い道路・港湾・空港」,「早期復旧と復興の加速化に向けた取組」,「震災教訓の伝承」を4つの柱とし,それらを構成する様々な取組を纏めたものである。
内容 ■ 独自性
・今回の東日本大震災で得られた教訓を踏まえ,震災前の状態に戻す単なる復旧ではなく,50年先を見据えた新しい日本のモデルとなるような県土づくりを目指し,宮城県震災復興計画における復興のポイントの第1番目に「災害に強いまちづくり宮城モデルの構築」を掲げ,最重点で取り組んでいる。
・「災害に強いまちづくり宮城モデル」は,津波により尊い命を二度と失うことのないよう,災害に強い県土構造への転換を図るため,震災教訓と復興への知見,復旧・復興を進める上での課題等を踏まえ,新しい津波防災の考え方や新しいまちの構築,住まいの早期復旧などの「安心安全なまちづくりに向けた取組」,防災道路ネットワークの整備や港湾の機能強化などの「災害に強い道路・港湾・空港に向けた取組」とともに,早期復旧に向けた用地取得対策や施工確保対策などの「早期復旧と復興の加速化に向けた取組」や風化防止と防災教育などの「震災教訓の伝承に向けた取組」の4つの柱に沿った宮城県独自モデルの構築に取り組んでいる。
・これらの震災教訓を活かした大津波対策の取組を「災害に強いまちづくり宮城モデル」として,後世に着実に伝えていくとともに,全国から支援をいただいている被災県の責務として,南海トラフの巨大地震が懸念されている地域をはじめ全国の都道府県や市町村などの防災対策へ活用いただくようしっかり発信していく。

■ 東日本大震災
平成23年3月11日午後2時46分,三陸沖を震源とした東北地方太平洋沖地震は,最大震度7,マグニチュードは日本観測史上最大の9.0の超巨大地震であった。地震発生後30分から1時間後に沿岸に到達した最大20mを超える巨大津波は,海岸防潮堤や河川堤防を越えて多くの尊い人命と財産を一瞬のうちに奪い去った。
宮城県では,死者行方不明者が1万1千名を超え,住家等の全壊半壊は24万棟に達し,被害額は9兆円を超えた。巨大津波により沿岸部の住宅・社会資本が壊滅的な被害を受けた。
震災直後から,被災状況の情報収集や救急救助活動に始まり,道路の啓開(がれき撤去)によるルートの確保,被災した公共土木施設の応急復旧及び膨大な数の応急仮設住宅の建設などに県の総力を挙げて取り組んだ。

■ 取組内容
1 安心安全なまちづくり
(1) 新しい津波防災の考え方
東日本大震災の発生後,最大クラスの大地震や大津波などあらゆる大規模災害を考慮した防災体制を構築していくことが,国の中央防災会議からも示され,そのため,まちづくり計画に当たっては,想定津波を2段階に区分し,数十年から百数十年の頻度で発生する津波(レベル1)に対しては,防潮堤等の構造物でしっかり人命・財産を守っていく「防御の考え方」に基づき,今回の津波のような構造物の防御レベルをはるかに上回る津波(レベル2)に対しては,津波が防潮堤を超えても壊れにくい粘り強い構造とするとともに,避難路整備などの住民避難誘導対策(避難計画)の強化を図り,確実に人命を守る「減災の考え方」に基づき,災害に強いまちづくりに取り組んでいる。

(2) 地形特性や被災教訓を踏まえた「新しいまちづくり」
二度と尊い命を津波被害により失うことのないよう,その地域の地形特性や被災事象を踏まえた災害に強い県土構造への転換を図る必要がある。そのためにも,沿岸北部地域においては,三陸リアス式海岸で平地が狭く高い津波が大きいまま襲来したことから,住居の「高台移転」と水産業等の働く場を従来の海沿いに整備する「職住分離」を基本としたまちづくり,沿岸南部地域においては,仙台平野のなだらかな平地が連続していることから,海沿いの防潮堤や高盛土道路により津波の減衰を図る「多重防御」と住居の「内陸移転」を基本としたまちづくりとするなど,大津波対策の観点から新しい視点でのまちづくりに被災15市町とともに取り組んでいる。

(3) 住まいの早期復旧
住まい確保については,仮設住宅から災害公営住宅等の恒久住宅への早期移行が最優先事項であったが,事業を担う被災市町の深刻なマンパワー不足と住宅整備のノウハウ不足が大きな課題であった。そのため,県では復興住宅の整備について地域の実情に合わせた整備手法を早期に構築し,市町直接建設や県受託による整備に加え,民間からの整備買取方式として公募型や地元企業の協議会型,UR都市機構型などの多様な手法を活用し,復興住宅の整備を推進している。

2 災害に強い「道路」「港湾」「空港」
(1) ラダー型防災道路ネットワーク
震災直後から救急救命活動や緊急物資輸送などに重要な役割を果たした三陸縦貫自動車道については,東日本大震災からの早期復興に向けた国のリーディングプロジェクトに位置付けられ復興道路として整備が進められており,東西の交通軸となるみやぎ県北高速幹線道路や県際・群界道路の整備,離半島部の孤立解消道路の整備と合わせて,大規模災害時に分断・孤立せず,他圏域からの円滑な支援を可能とする防災道路ネットワークの整備が進められている。

(2) 物流・交流基盤の強化
被災当初の燃料供給不足に対して石油タンカーの入港により燃料供給拠点としての機能を果たした仙台塩釜港については,コンテナターミナルの拡張や津波漂流物対策施設の整備を進めるとともに,仙台空港については司令室の高層化や発電室の扉の耐水化に加え,交流人口の拡大に向けた空港機能の充実を図るなど,物流交流基盤の機能強化に取り組んでいる。

3 早期復旧と復興の加速化に向けた取組
(1) 早期の用地取得対策
膨大な用地の早期取得や多数相続等の取得困難地の用地取得に対しては,用地交渉の外部委託や土地収用制度や財産管理人制度の活用などによる取組を進めている。

(2) 受注環境改善と施工確保対策
復旧・復興工事の執行に係る資材不足・技術者不足などの施工確保対策については,仮設生コンプラントの設置などの資材確保,配置技術者の要件緩和や労働者宿舎費の計上,復興係数の導入による適正な工事価格算出とともに,発注者側のマンパワー不足については,発注ロットの拡大や自治法派遣職員による支援,外部委託などに取り組んでいる。

4 震災教訓の伝承
(1) 3.11伝承・減災プロジェクト
記憶はいつか消えてしまうことからこそ,記録することが大切だと考えており,そのため,震災の記録,被災事実を後世に伝え,迅速な避難行動に繋げるため,「3.11伝承・減災プロジェクト」に力を入れ,記憶より記録で「ながく」伝承,かたりべの裾野を拡げ「ひろく」伝承,防災文化を次世代へ「つなぐ」伝承を3つの柱として推進している。
具体的には,津波浸水表示板の設置,公共施設の震災遺構保存,かたりべによる震災時の伝承,津波防災シンポジウムの開催,次世代への防災教育,津波資料のアーカイブ化,伝承サポーター制度等の官民協働の取組など,様々な方法により,震災を風化させることのないよう震災伝承の取組を進めている。

■ 創造的復興に向けた取組
「災害に強いまちづくり宮城モデルの構築」を推進するとともに,将来の発展を見通した「創造的復興」を目指し,従来とは違った新しい制度や思い切った手法を積極的に取り入れていく必要がある。
東北の空のゲートウェイである仙台空港においては,平成28年7月から東急グループによる全国第1号となる国管理空港の民営化が開始された。台北線LCCの新規就航,ソウル線や台北線の増便など民営化の効果が現れている。民間ノウハウを活かした仙台空港の利便性の向上と利用促進を図り,航空路線の更なる充実や空港利用者の増加による交流人口の拡大とその経済効果を宮城のみならず,東北全体の活性化に繋げていく。
また,今回の震災において必要性が認識された大規模災害時の活動拠点については,消防や警察等の活動拠点,災害医療や物資供給等の拠点となる宮城県広域防災拠点の整備をしっかりと進めていく。

■ 復旧・復興の進捗状況(平成29年3月末現在)
震災から6年が経過した平成29年3月末現在の復旧・復興の進捗状況については,公共土木施設の災害復旧事業の全体2,303箇所のうち,2,013箇所(約9割)が完成している。
一方,工期が複数年に渡る防潮堤等の大規模工事の多くが完成していないことから,金額ベースの完成率は約2割にとどまっており,平成32年度の復旧・復興事業の全箇所完成に向け,現在,沿岸部の工事が最盛期を迎えている。
災害公営住宅については,平成30年度全箇所完成に向け,計画戸数約1万6千戸のうち,約1万4千戸(約9割)が完成している。
また,復興まちづくりについては,防災集団移転促進事業の平成30年度完了に向け,計画195地区のうち188地区(約9割),土地区画整理事業の平成32年度完了に向け,計画34地区のうち33地区(約9割)において住宅建築が可能な状況となっている。
しかし,県内では,未だ約2万人の方々が応急仮設住宅等で不自由な生活を余儀なくされている状況にあり,被災者の方々に一日も早く安心した暮らしを取り戻していただくため,引き続き,災害公営住宅の整備をはじめとする復旧・復興事業の加速化に全力を挙げて取り組むほか,持続可能なまちづくりを実現するため,地域コミュニティの再生などにしっかりと取り組んでいかなければならないと考えている。
災害に強いまちづくり宮城モデル
災害に強いまちづくり宮城モデル
地域特性を活かした沿岸防災イメージ
地域特性を活かした沿岸防災イメージ
本件問合先 宮城県土木部土木総務課企画調整班
022-211-3108
dobokgk1@pref.miyagi.lg.jp