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タイトル 熊本県で発生した高病原性鳥インフルエンザへの対応について(平成28年度)
施策・事業名称 家畜伝染病予防事業
都道府県名 熊本県
分野 農林水産
事業実施期間 平成28年12月26日~平成29年1月19日
施策のポイント 平成26年4月13日の発生以降、県内2例目となる高病原性鳥インフルエンザが平成28年12月27日に南関町の採卵鶏農場で発生した。簡易検査陽性後に速やかに県防疫対策本部を立ち上げ会議を開催するとともに、年末で動員者や関係団体等との連絡がとりにくい中、かつ複雑な鶏舎構造や極寒、雨等厳しい条件が重なったにもかかわらず、前回発生時の教訓を活かして改正したマニュアルに基づく対応と関係機関の協力により、疑似患畜確定から約40時間で防疫措置を完了し、感染拡大することなく最短である1月19日午前0時の早期終息に至った。
内容 1 はじめに

平成28年12月27日、熊本県玉名郡南関町の採卵鶏農場において、本県では2例目となる高病原性鳥インフルエンザが発生した。今回の防疫対策は、平成26年4月の発生後に検証を重ねて改正した県防疫対策マニュアルに基づいて進められ、疑似患畜確定からの防疫措置時間は、殺処分完了が約23時間後、防疫措置完了が約40時間後と短時間で終了した。
今回、前回の発生を受けて平成27年6月30日に改正した県防疫対策マニュアルによる対応と、発生後の県内養鶏農家への対応、新たに発生した課題及びその対策について紹介する。


2 改正県防疫マニュアルにより実施した防疫対応

(1) 県本部等の総合指揮機能強化
他部局との調整、職員の動員、報道対応、警察・自衛隊・国機関との連絡調整等、総合的な対応を行う総合指揮所を設置したことにより、畜産課は現場への指示に集中することができた。また、発生農場及び支援センターには、連絡補助員を配置し、本部への進捗状況等の報告体制を強化したことで、本部は現場の状況把握が容易となった。

(2) 発生規模に応じた動員計画
国指針に規定される防疫措置期限(殺処分24時間、防疫措置72時間)に対応するため、1万羽、3万羽、5万羽、10万羽ごとに動員計画を策定。また、職員異動直後の発生にも対応できるよう、毎年度当初に県職員動員名簿を作成。発生時の動員者招集は農林水産部筆頭課及び人事課が行い、全庁的な対応(※)を円滑に実施することができた。

※ 今回の県職員動員者数:延べ1,889人

(3) 大規模発生に備えた防疫資材の準備
これまで県内の平均飼養羽数4万羽を想定した備蓄資材を10万羽規模に拡大。休日・深夜における備蓄資材配送のため、運送業界、資材業界等との緊急連絡体制を整備するとともに、関係業者及び団体と防疫協定を締結。今回、想定どおりの状況に加えて年末という要素も加わったものの、全体的な資材不足はなかった。

(4) 支援センター及び発生農場における指揮命令系統の確立
支援センターには、防疫支援体制を総括する総括責任者を配置し、県本部及び現場事務所との連絡体制が強化された。現場事務所には、動員や資材の過不足、補給体制を強化するための行程管理責任者を配置した。また、発生農場には、現場責任者を補佐する農場防疫補佐、殺処分班や埋却班等ごとに作業班リーダーを配置し、各々異なる色の防疫服及びベストを着用(※)し、視覚的にも指揮命令系統が明確となった。

※現場責任者:青の防疫服に赤ベスト、農場防疫補佐:青の防疫服に黄ベスト、作業班リーダー:青の防疫服、一般動員者:白い防疫服

(5) その他
平成28年12月26日19時30分の簡易検査陽性を受けて、22時に県防疫対策本部会議を開催。迅速かつ的確な防疫作業及びまん延防止対策、並びに風評被害の防止を図るため、全庁的な対応を実施する事とした。
飼養規模が6万羽を超えていたため、知事の判断で自衛隊に災害派遣要請(※1)を行った。
発生直後に実施する発生状況確認検査(※2)及び疫学関連農場検査は、農林水産部の獣医師職員数では対応が困難であったため、事前に家畜防疫員に任命していた健康福祉部の獣医師職員19名に応援を依頼した。
また、毎年人事異動後に農林水産部全職員を対象とした防疫研修会を実施して作業班リーダー育成を強化。また、動員者向けのしおりDVDの作成、視聴により作業内容の理解が容易となり、速やかな作業進捗が図られた。

※1 自衛隊職員動員者数:延べ555人
※2 健康福祉部獣医師職員による検査
・移動制限区域内農家 6農場
・疫学関連農場 6農場

3 県内養鶏農家に対する発生後の防疫対応

発生の要因として、渡り鳥とねずみ等小動物の介入が疑われたことから、県下全養鶏農家(184戸)を対象とした防疫対策を強化。
(1) 消石灰配布による一斉消毒(2回) 平成29年2月終了
鶏舎周囲等への石灰散布
(2) 野生動物によるウイルス侵入防止対策 平成29年2月終了
ねずみ粘着シート、補修用防鳥ネット、補修用金網の配布

県内5カ所の家畜保健衛生所から全農場に鳥インフルエンザに関する情報等を提供し、農場消毒の実施や異常鶏の早期発見・早期通報等の徹底を指導。


4 今回の課題とその対策

今回の発生後、関係機関及び動員者等からの様々な意見を基に検証を行い、平成29年12月21日に県防疫対策マニュアルを改正した。概要は以下のとおり。

(1) 疑似患畜確定前の県対策本部会議の開催
これまで疑似患畜確定後としていたが、今回の防疫措置経過を踏まえて簡易検査陽性確認後直ちに前倒しして開催することとした。併せて、これまで記載されていなかった地域における対策会議の速やかな開催について明記。

(2) 支援センター及び現場事務所の迅速な設置と円滑な運営
支援センター及び現場事務所の速やかな立ち上げのため、5万羽規模で32人の動員者を農林水産部から先行派遣。自衛隊を派遣要請した場合は、自衛隊員も含む人数に対応できる支援センターを用意することとした。

(3) 防疫資材の備蓄及び搬送方法の改善
カゴ台車の活用により備蓄及び運搬作業を省力化した。組立型消毒ポイント資材は、発生地地域振興局に向けて搬出することとした。

(4) 防疫作業従事者に対する健康面等への配慮
先行して農場に入る事前調査班について、問診票による防疫作業の適否判断を行うこととした。また、防寒対策としてストーブと防寒シートの備蓄、防疫作業従事者に対する軽食提供について明記。


6 その他

これまでの全国における発生事例の疫学調査において、野鳥が飛来する農場周囲の池及びその他の野生動物とウイルス侵入との関連が示唆されており、これらを踏まえた衛生指導に努め、一層の防疫強化を図っていきたい。
県対策本部
県対策本部
総合指揮所
総合指揮所
捕鳥作業
捕鳥作業
消毒ポイント
消毒ポイント
本件問合先 農林水産部生産経営局畜産課
096-333-2402
chikusan@pref.kumamoto.lg.jp