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タイトル | 離島を舞台にしたIT企業・人材の誘致・定着推進 |
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施策・事業名称 | 姫島ITアイランド構想推進事業 |
都道府県名 | 大分県 |
分野 |
商工・労働 人口減少対策 |
事業実施期間 | 平成29年12月22日~令和4年3月31日 |
施策のポイント |
〇企業誘致の面では県内で最も厳しい環境にあるとも言える離島の姫島村に、IT企業・人材を呼び込み、新たな雇用の場と活力の創造を目指すと共にIoT技術等により地域課題を解決する「姫島ITアイランド構想」の実現に向けた取組を開始した。 〇H29年度にIT企業が入居可能な姫島ITアイランドセンターを整備したことに伴い、統計を取り始めてから初めて、島に企業が進出(IT企業2社)。 〇今後は、情報通信環境のさらなる整備、企業・人材の定着支援、島のブランド力向上に取り組むほか、姫島発のイノベーション創出を目指しIoT等の技術で地域課題の解決に挑戦するプロジェクトに取り組む。進出企業を初めとするIT企業と県、村が一体となって積極的にこれらの取組を推進していく。 〇姫島ITアイランド構想を大分県版第4次産業革命〝OITA4.0〟を象徴する事業に発展させることにより、他地域との差別化を図り、県内全体へのIT企業・人材の呼び込みを加速させる。 |
内容 |
1.背景 姫島村では、進学就職などで、若い世代を中心に人口流出が進み、主要産業である水産業も低迷する中、一時期は4,000人を越えていた人口も、現在は1,816人(H31.3.1時点)と半減しており、2040年には更に約半分に減少するとの推計もある。今後の人口減少を最小限に食い止めるためにも、島内に新たな雇用の場を創出していくことが喫緊の課題となっている。 これまで、地方における雇用の場の創出は、工場の誘致に負うところが大きかったが、低賃金を武器とする新興国との競争激化により、国内での大規模工場の誘致は難しくなっている。他方で産業構造の転換によりベンチャーなどのIT企業が存在感を高めている。IT企業は工場のような大規模な投資を必要とせず、通信インフラさえ整っていれば、地方においても大都市圏と変わらない仕事ができるとされており、徳島県神山町のようにIT企業の誘致で地域に新たな産業を興す事例も現れている。 大分県では、平成29年度より大分県版第4次産業革命〝OITA4.0〟への挑戦を開始し、IoTなどの技術により地方が直面する様々な課題の解決を図ろうとしているが、実際にその目的を達成するためには、県内だけでなく、県外のIT企業・人材の力を活用していくことが不可欠であり、IT企業や人材の積極的な呼び込みを目指している。 2.目的 離島でも大都市圏と変わらない仕事が可能なIT産業をターゲットに据え、IT企業やIT人材の誘致・定着に取り組むことにより、離島に新たな雇用の場と活力を創造すると共にIoT技術等により地域課題を解決する「姫島ITアイランド構想」の実現を目指す。 また、県内でも最も企業誘致の面で条件が厳しい地域とも言える姫島村において、IT企業・人材による地域産業の活性化事例を創出し、大分県版第4次産業革命〝OITA4.0〟を象徴する取組に位置づけることにより、〝OITA4.0〟の対外的なプレゼンスを高め、県外からのIT企業・人材のさらなる呼び込みにつなげるとともに、同様の取組を県内の他地域にも波及させる。 3.施策の方向性、内容 神山町など、他の先行地域の取組事例から、IT企業の誘致・定着には「都市部と変わらない情報通信環境の整備」、「企業・人材が定着するための支援」、「活力を呼び込むためのブランド力の向上」が必要な要素であると分析。 「姫島ITアイランド構想」の実現に向け、IT企業や人材が進出するための通信基盤整備や、進出後の定着支援、姫島村でのIT関連の勉強会開催や首都圏等に向けた情報発信など、3つの要素に対応する施策を展開する。 他方で、IT企業の誘致については、徳島県神山町をはじめ、全国各地の自治体も取り組んでおり、姫島村のような、過疎地の中でも特に条件不利な離島の自治体が地域間競争を勝ち抜くためには、先行地域を模倣するだけでなく、成功事例とされる"神山町を越える"ような差別化が必要と考える。 豊かな自然や伝統、既存の基幹産業(車えび養殖等)、あるいは1つの島で完結する行政区域など、姫島という環境がもつオリジナリティを活かしIoT技術等により地域課題を解決する先駆的なプロジェクトを支援することにより、受託開発にとどまらず独自のビジネス展開を図りたいIT企業にとっても魅力的な地域となることを目指す。 4.施策内容 (1)都市部と変わらない情報通信環境の整備 ・H29年度に、廃校舎を活用し、IT系企業が入居できるオフィス「姫島ITアイランドセンター」を姫島村が新たに整備した(村に対し県が経費の一部を助成)。 ・これにあわせ、県が管理する市町村間を結ぶ光ファイバーネットワーク「豊の国ハイパーネットワーク」を民間開放し、企業の入居するオフィスまでの高速通信環境を整備した。 ・H30年度は、村と県とが連携し、旧校舎を活用したコワーキングスペースの整備や、フェリー待合所でのWi-Fiスポット整備などを実施した。 ・R2年度には、高速通信網を整備し、全島域光ファイバー化を完了した。 (2)移住者、企業の定着支援 ・姫島村では、これまで他の自治体が実施しているような移住対策に力点が置かれていなかったが、H29年度のIT企業2社の進出を契機に、村と県が協力し、移住ガイドブックの作成や移住体験ツアーの開催などを実施するとともに、移住者へのきめ細やかなフォローを行っている。 <これまで行った支援例> 例1:レンタカー会社との連携によるアクセス改善 ・大分空港から伊美港(姫島村までの定期便が出ている港)までの公共交通機関のアクセスが悪いため(車で40分のところ、バスを乗り継ぐと2~3時間かかる。)、進出IT企業が東京から姫島まで出張に来た際は、空港でレンタカーを借り上げることが通常であるが、島に渡っている間、伊美港の駐車場代金の負担が発生し、企業にとっては余分な負担となっていた。 ・そこで、姫島村、大分県、レンタカー会社とで協定を締結し、進出IT企業向けに空港から伊美港間のレンタカー特別料金プランの設定や、村が管理する伊美港駐車場の減免措置などを新たに実施した。 例2:IT企業社員の住宅サポート ・村内に民間の賃貸アパート等がないため、空き家の活用に向けた所有者との調整や、公営住宅の活用(入居には所得制限があるため、特例を適用)等により住宅需要に対応した。 例3:モビリティを活用したワーケーションモニターツアー ・島外からIT関連企業や人材を呼び込むため、コロナ禍におけるテレワークの拡大や、ワーケーションなどによる観光市場の拡大といった近年の状況を踏まえて、自動車に乗って、好きな観光地で、好きな時間に働くことができる、新しい働き方や旅のかたちの有効性を実証した。 (3)活力を呼び込むブランド力の向上 ・先進地視察等において、IT技術者から「高速通信さえ出来れば、地方でもパフォーマンスを落とさず仕事ができる」という感想の一方で、「IT関連のイベントや勉強会など、情報交換や刺激を受ける場が地方には少ないことに不安を感じる。」などの声をきいた。 ・ITアイランド構想推進にあたっては、こうした不安を払しょくするため、平成30年度以降、進出IT企業が中心となって行う村内でのIT関連の勉強会やイベントを開催している。 ・また、IT企業の更なる呼び込みを図るため、首都圏等へ向け「姫島ITアイランド」の情報発信をおこなっている。 (4)島の課題解決に向けた進出企業による先駆的なプロジェクト創出 ・IT企業と地元が協力して実施する島の課題解決に向けたIoT等のプロジェクトに対し助成を行い、 "姫島発"のイノベーションの創出を目指す。 <プロジェクトイメージ> ・太陽光エネルギーからの充電で走行する電気自動車を活用した、地域住民と観光客のカーシェアリングシステム ・車えび養殖の生産性向上に向けたIoTプロジェクト (5)村民のITリテラシー向上 ・若い村民がIT等の技術に興味を持ち、IT技術者として村内の立地企業の労働力となるため、小中学生対象のプログラミング教室等に取り組むこととしている。 ・島民がITの利活用を積極的に行えるよう、小学校に最新のパソコンを整備し、住民対象にもパソコン教室等を開催している。 5.これまでの成果 H29年度に、企業が入居できるオフィス(姫島ITアイランドセンター)を新たに整備したことにより、統計を取り始めた1979年以降初めて、村にIT企業2社が進出した。現在では、姫島出身者や県外からの移住者などが働いている。島で暮らしながら、東京等と変わらない最先端の仕事が出来るということで、転勤や転職を決断したようである。また、人材確保に苦労しているIT企業にとっては、自社の社員や採用候補者向けに、離島のサテライトオフィスという新しい働き方の選択肢を示すことで、働き方改革や人材確保につなげていくことも期待しているようである。村民からは「ITの仕事が出来れば島に帰って来られるなら、うちの子にもITの勉強をさせてみようか。」といった声も聞かれ、IT企業が進出して以降、ITアイランドとしての機運が高まっている。 6.目標 ○事業実施による移住者数の増:17人増(R3末時点) |
関連 ホームページ |
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本件問合先 | 大分県商工労働部DX推進課 |
097-506-2474 | |
a14280@pref.oita.lg.jp |