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タイトル 徳島・海部地域「きゅうりタウン構想」による産地活性化への取組
施策・事業名称 きゅうりタウン構想推進事業
都道府県名 徳島県
分野 農林水産
地域振興・まちづくり
人口減少対策
事業実施期間 平成27年4月1日~
施策のポイント 担い手の減少により産地の維持が厳しい状況となったキュウリ産地を活性化するため、10年後の産地の目指すべき姿を設定し、地域ぐるみの支援体制による移住就農者の募集・受け入れ・育成による担い手の確保、栽培面積の拡大等を図り地域の活性化に繋げ、地方創生を図るものである。
内容 ■目的
徳島県海部地域の特産物である促成キュウリを更に魅力ある経営とすることで、担い手の確保と栽培面積の拡大等を図り地域の活性化に繋げるため、就農を希望する若者の移住と育成を進めて地方創生を図る。

■背景
促成キュウリ産地として知られる徳島県海部郡は、地域が一体となって築いてきた全国トップクラスの栽培技術により、地域における儲かる品目となっている。しかし、過酷な高温・高湿度環境の中で毎日続く収穫作業や経験と勘での栽培技術から後継者は増えず、生産者の高齢化が進むことで年々担い手が減少し、生産農家数はピーク時の4分の1まで落ち込むなど厳しい状況となっていることから、担い手の確保と産地面積の拡大が急務となっている。

■取組内容
1.海部地域が一体となった推進体制の構築
牟岐町、美波町、海陽町の海部地域3町とJAかいふ、徳島県を中心に促成きゅうりの担い手確保に向けた「海部次世代園芸産地創世推進協議会」(以下「推進協議会」という。)を設立した。
「推進協議会」において、全国的に成功例が少ないきゅうり養液栽培に取り組むこととし、10年後の目指すべき姿として栽培面積を5.7haから10haに、10a当たり収量を21.7tから30tに、所得を690万円/30aから1,000万円/30aとするなど具体的な数値目標を設定した。また、構想実現のため、(1)経営モデル調査、(2)研修体系システムの確立、(3)次世代技術導入・匠の技の継承、(4)移住就農者募集のための情報発信の4つのステップを設定した。

2.「海部きゅうり塾」の開設による新規就農者の育成
促成キュウリは、野菜のなかでも栽培技術が難しいうえ、多くの労働力が必要なことから、本来は新規就農者には不向きとされている品目である。このことから、農業経験のない新規就農者でも知識や技術を習得できる場として、「海部きゅうり塾」を開設した。
海部きゅうり塾では、キュウリ栽培に必要な基礎知識を学ぶ座学、「匠の技(収量30t/10a)」を有する篤農家のもとでの実技講習などの実習を多く取り入れたカリキュラム編成、具体的な栽培工程のマニュアル化など、新規就農者に対応した新たな育成方法に取り組んだ。座学・実習後は、自立経営を目指すための経営計画を作成する内容となっている。

3.次世代園芸技術をめざした「次世代園芸実験ハウス」の設置
「きゅうりタウン構想」の実現のため、キュウリの養液栽培技術を確立するための「次世代園芸実験ハウス」、塾卒業生の自立就農支援のための「レンタルハウス」、生産者と消費者の交流のための「体験交流ハウス」を整備した。これらの施設は、栽培環境及び労働環境の改善、省力化を目的に、複合環境制御技術を導入した高軒高ハウスとした。
そして、キュウリ養液栽培技術の開発については、JAや支援センター、民間企業の技術陣と篤農家が定期的集い、実験ハウスの栽培状況及びデータ分析を行っている。これらのデータを、塾生のキュウリ栽培に反映させることで、新規就農者でも早期に自立につながる体制としている。
なお、養液栽培技術の確立に向けて、全国から養液栽培に取り組む企業・生産者・大学の先駆者を集い、平成29年11月に海部地域において全国初の取組となる「きゅうり養液栽培サミット」を開催し、栽培技術確立の加速化を図った。

4.新しい働き方改革の提案(SNSによる情報発信)
「きゅうりタウン構想」による移住就農の取組みを情報発信していくために、フェイスブックを活用している。移住就農者の視点で「海部きゅうり塾」の様子や、海部郡の豊かな自然や遊びを紹介したところ、多くのアクセスがあり、「きゅうりタウン構想」の取組みを「伝える」重要な場となっている。

5.「かいふ農林水産未来プロジェクト」の展開
「きゅうりタウン構想」を核に、地域の暮らしや食を通じた農業への関心を高めることを目的として、平成30年度に「農林水産みらい基金」を活用して県内外の消費者等との交流及び情報発信の拠点「きゅうりタウン体験・交流ハウス」を「道の駅日和佐」の敷地内に整備した。移住就農ツアー等の参加者への研修、JAかいふが開発した米ゲルアイス(キュウリジャム添え)の情報発信等に活用している。

■効果
移住就農希望者をさらに確実な就農へと導くために、研修体系システムの確立として、(1)革新的技術を導入した次世代園芸実験ハウスを建設し、(2)新たな担い手育成のための「きゅうり塾」の開講に加え、(3)自立就農に向けたシステムとして、レンタルハウスや空きハウスバンク等を構築するとともに、(4)養液栽培技術の早期確立に向け、全国への情報発信と収集、篤農家の技術解析による更なる技術向上を支援した結果、平成30年度末までに24名の塾生を受入れ、現在16名(13経営体)がキュウリ栽培で就農している。
新規就農者の栽培状況としては、平成27年度に土耕栽培で就農した塾1期生が地域の平均収量(20t/10a)を概ね達成し、うち1名はベテラン農家並みの収量(30t/10a)を達成した。養液栽培においても、平成29年度に就農した2期生が地域の平均収量を超える23t/10aを達成した。また、2・3期生7名が養液栽培で就農したことにより、海陽町野江地区に1ha規模の次世代園芸団地が完成し、「構想」の実現に向け着実な成果が得られている。

■今後の展開
推進協議会を核とした地域ぐるみの支援体制のもと、塾生の自立経営を実現することで、海部地域の促成キュウリ栽培の活性化、産地の拡大を推進していく。
また、「きゅうりタウン体験・交流ハウス」を核として、地域住民との交流を活発化させるとともに、県内外への情報発信を積極的に行っていく。
海部きゅうり塾開校式
海部きゅうり塾開校式
養液栽培システム
養液栽培システム
塾生 実習風景
塾生 実習風景
次世代園芸団地(海陽町)
次世代園芸団地(海陽町)
関連
ホームページ
https://www.facebook.com/kaifukyuuri
http://www.miraikikin.org/activities/agriculture/kaifu.html 
本件問合先 徳島県南部総合県民局 農林水産部<美波> 海部プロジェクト担当
0884-74-7488
nanbu_n_m@pref.tokushima.jp