平成29年10月 井戸 敏三 兵庫県知事

 巨大災害の危機が迫っている。南海トラフ巨大地震、首都直下地震、いずれも今後30年以内に70%の確率で発生するとされている。これらの災害は、社会に甚大な影響を及ぼし、我が国の歴史上、最悪の自然災害となる可能性もある。
 阪神・淡路大震災のあった20年前と違って、国の体制は整ってきている。特に東日本大震災後、国の防災施策が強化され、応急対策も体系的に行われるようになった。しかしそれでも、熊本地震のような大きな災害が起きると、救援物資はなかなか被災者まで届かず、避難所の運営は混乱する。仮設住宅の整備も思うように進まない。何度も経験してきたことの知見やノウハウが次の災害に十分活かされていない。事前に取り組むべき課題は多い。過去の事例に学ばなかったという災害史から脱却しなければならない。
 もし、首都直下地震が起きたらどうなるだろう。東京の交通網が寸断され、電気、上下水道、ガスがストップするような事態に陥ったとき、代替拠点の立川で本当にヘッドクォーターの機能が果たせるのかという懸念もある。
 災害は時と場所を選ばない。東京を襲う大災害を「国難」の時にしないため、第一に、これまでの経験と教訓を活かした事前防災の徹底、第二に、いかなる事態にも対応できる、首都機能のバックアップ体制の整備が欠かせない。
 こうした問題意識のもと、昨年、関西広域連合の中に、河田惠昭先生をはじめ第一線の専門家による懇話会を設置し、我が国の防災・減災体制のあり方を検討した。
 本年7月にまとめられた報告書では、まず、巨大災害に対処するために必要な政府の機能を整理している。①事前対策から復興までの総合的な政策の推進、②災害情報の一元化、③全自治体の防災対応力の向上、④自治体等との緊密なネットワークの確保、⑤災害ノウハウや調査研究成果の活用、⑥首都機能をバックアップできるリダンダンシーの確保、以上6点である。その上で、これらの機能を政府が果たすためには、統一的な国の組織として複数の拠点を持つ防災庁が必要との提言をいただいた。
 ポイントは、首都機能のバックアップはもちろんのこと、巨大災害に対する事前対策を十分に行うためには、いろいろな事例を十分に調査分析し、ひとつの対応シナリオにまとめていく役割を持ったヘッドクォーターが必要ということである。この提言をきっかけに、我が国の防災体制の抜本的な強化を、国民的な議論にしていかなくてはならない。
 早速8月には、国への働きかけとして、報告書を小此木防災担当大臣にお持ちして、防災庁の必要性について説明を行った。
さらに、先般、全国知事会が発表した千年の安全国家を作るための「岩手宣言」にも防災庁の創設を盛り込んでいただいた。「事前対応が不可欠だ」という全都道府県知事の共通認識のもと、この宣言ができたと思っている。
 これからも、11月の自治体災害対策全国会議をはじめ様々な機会を通じて、防災庁の必要性を国民に訴え、全国都道府県、市町村、関係機関と幅広く連携して、防災庁創設への機運を盛り上げていきたい。

(阪神・淡路大震災)

 

 

 

 

 

 

(東日本大震災)                                        (熊本地震)

図4図5