平成26年09月 「地方創生」の背景と論点

毎日新聞論説委員  人羅 格

はじめに

   地方の人口減少問題が内政の主要課題として認識され安倍内閣は政府に新組織を発足、ビジョン策定に着手した。民間研究機関「日本創成会議」分科会が今年5月に公表したいわゆる「消滅自治体リスト」の公表が呼び水となり、急速に機運が髙まった。その一方で具体的にどんな政策領域を対象とし、地方の参画がどの程度保証されているかは必ずしも明確でない。

 今回の動きは「人口減少」と「東京集中」両問題の共通解に地方再生というテーマを設定した点に特徴がある。同時に地域づくりは中央の押しつけによる画一対応が適合せず、多様性が求められる分野でもある。「住みやすい地方」の復権に何が問われるのか。推移を点検すると同時に今後の論点を概観した。

年内にも総合戦略

   2014年7月25日、内閣官房に「まち・ひと・しごと創生本部」設立準備室が発足した。地方の人口減少問題が注目される中で当面の地域活性化や中長期ビジョンを策定する新組織で、9月の内閣改造で担当相を設置、安倍晋三首相を本部長とする正式な本部に移行する。なお、新組織は政府やメディアで従来「地方創生本部」と称されたため本稿も便宜上その呼称を用いる。

   体制は内政担当の古谷一之内閣官房副長官補が準備室長を務め、厚生労働省出身で消費者庁次長だった山崎史郎氏が室長代理として全体を統括する。山崎氏は「消滅リスト」作りを主導した増田寛也元総務相と近く、人口問題や介護保険など社会保障政策全般に精通していることで知られる。

   室長代理としては総務省(旧郵政省)出身で前内閣府男女共同参画局長の佐村知子氏も専従で地方や経済界との調整や地方における女性の起用の推進などにあたる。国土交通省出身で内閣官房地域活性化統合事務局長に就いた内田要氏は室長代理を兼任。総務省出身では旧自治省の末宗徹郎内閣府地方分権改革推進室次長も創生本部準備室次長を兼任している。準備室の陣容は約70人で、専従職員は約30人規模だ。

   地方創生本部が具体的にどんな政策の立案にあたるかは流動的だ。現時点で定まっているスケジュールは有識者会議を設置したうえで、早ければ年内を目途に地方の人口減少問題にあたる「長期ビジョン」と「2020年までの総合戦略」を策定することだ。

   政府の「骨太の方針2014」が示した「50年後に1億人程度の安定した人口構造を保持する」との目標達成に向け、総合戦略は2015年度から5年間にわたる具体的な施策のイメージを示す。この青写真を踏まえ、地方側は都道府県が中心となり来年度中にそれぞれのビジョンをまとめる。

   加えて安倍晋三首相は今秋召集の臨時国会に地方創生関連法案の第一次案の提出を指示した。①地域再生法②官公需についての中小企業者の受注確保に関する法律③中小企業による地域資源活用促進法の3法改正が軸になるとみられる。

   ①は自治体が策定した地域再生計画を政府が認定し、日本政策投資銀行から低利融資を受けられるなどの支援措置を拡充するものだ②は官公受注における地方のベンチャー企業優遇の拡大、③は地域特産品の販路開拓などへの政府支援の強化などが検討されている模様だ。

   なお、居住地以外の自治体に寄付した分、一定範囲で住民税や所得税が減額される「ふるさと納税」についても政府は拡充方針を固めている。ただ、税制改正を経るため関連法案整備は来年の通常国会になりそうだ。

   一方で政府は来年度予算編成にあたり概算要求で地方創生などの特別枠を設けた。こうした対応は来春の統一地方選を強く意識したものだ。

追記1

   9月3日、第2次安倍改造内閣で石破茂前自民党幹事長が地方創生担当相に起用された。また、安倍晋三首相を本部長とし、石破氏と菅義偉官房長官を副本部長とする「まち・ひと・しごと創生本部」(地方創生本部)が同日発足した。

   事務局は約70人体制で事務局長に杉田和博内閣官房副長官、事務局長代行に和泉洋人首相補佐官、古谷一之内閣官房副長官補が就いた。山崎、佐村、内田3氏は事務局長代理となった。また、末宗氏は事務局次長専任となった。なお、地方創生に関して政府は個別法案に加え、理念を示した基本法的な法案を9月29日召集の臨時国会に提案することを決めた。

「消滅リスト」2つの意味と波紋

   第2次安倍内閣の発足以来、政権が「地方の問題」に寄せる関心は必ずしも髙くなかった。軌道修正の転機となったのが日本生産性本部の日本創成会議・人口減少問題検討分科会(座長・増田寛也元総務相)による「消滅自治体リスト」及び提言「ストップ少子化・地方元気戦略」の公表だった。

   すでに非常に多くのメデイアで取り上げられているため詳述は避けるが、分科会が公表したリストは20~39歳の若年女性の人口をその地域の将来を決定づける指標と位置づけ、将来推計を自治体別に試算したものだ。

   周知の通り人口減少社会の到来自体は不可避でもある。日本の総人口(2013年)は1億2730万人だが、国立社会保障・人口問題研究所(社人研)の推計によるとこのままだと2048年に1億人を割り60年には約3割減の8674万人になる。社人研が昨年3月に公表した地域別推計も地方の深刻な人口減少傾向を改めて裏付けた。だが、増田氏らは地方から大都市への人口流入が今後も継続する前提で試算をし直した。

   その結果、福島県を除き調査対象とした約1800の市区町村(政令市は区別集計)のうち、若年女性が2040年までに半数以下に減ってしまう都市は896と約半数にのぼり、社人研推計の373(全体の約2割)を大きく上回った。

   増田氏はこれを「消滅可能性都市」とし、このうち推計で人口1万人を割る523自治体についてはより消滅の可能性が高いと結論づけた(図1)。5月8日の公表以来リストは大きな反響を呼び、政界における地方の人口問題への認識を大きく変化させたと言っても過言ではない。

図1

(出典)日本創成会議・人口減少問題検討分科会「ストップ少子化・地方元気戦略」。

 

    大別してリスト公表に2つの影響があったと思われる。ひとつは自治体別にリストを公表することで地方の置かれた状況をリアルに認識させたことだ。

   増田氏らは月刊誌「中央公論」で昨年末、同様の試算を全体集計の形で示し、注目を浴びていた。だが、個別自治体ごとに推計人口リストを公表し、自治体行政の維持が危ぶまれることに「消滅」との過激な表現まで用いた反響は極めて大きかった。地方議会では6月定例議会の多くでこの問題が取り上げられ、首長らは対応に追われることになった。

   人口問題の特徴はこれまで漠然と危機が語られながら「減少」を前提とした政府全体の対策や取り組みがなかった点だ。日本にとって適正な人口規模とそれに応じた地方のありかたをめぐる議論が突き詰めて行われず、ある種の思考停止だったと言っても過言ではない。消滅リストは賛否両論も含め、その呪縛を解く「爆弾」となった。

   もう1点は、人口問題と東京一極集中問題を関連づけた点だ(図2)。単純に地方から東京への人口移動を指摘するだけでなく、合計特殊出生率が1.13と全国平均(1.43)より際だって低い東京への人口集中が日本全体の少子化に拍車をかける構図を強調したのである。東京がブラックホールのように若年人口を吸収し、日本全体を衰退させる構造を増田氏は「極点社会」と命名した。

 

図2

(出典)日本創成会議・人口減少問題検討分科会「ストップ少子化・地方元気戦略」。

 

   東京集中が人口の全体的な減少をどの程度加速させるかの実証は実際にはそれほど簡単ではない。とはいえ非婚、晩婚化が進む東京への人口流入に警鐘をならした効果は大きかった。従来、待機児童に代表される大都市圏の子育て支援や社会保障政策の問題として認識されていた人口問題は「地方の課題」に転化したのである。

   一方で、消滅リストについては地方、とりわけ町村を中心に根強い異論もある。人口がゼロになる訳でもないのに「消滅」という過激な言葉を用いて危機感を強調したことは小規模町村の絶望感をあおりかねず、加えて地方における「選択と集中」を加速しかねない、との警戒からだ。とりわけ推計人口が1万人未満となる自治体を区別した点に町村側の反発は強いようだ。

渡りに舟だった軌道修正

   5月8日に消滅リストが公表されて以来、安倍内閣の反応は早かった。5月19日、首相は増田氏に地方の人口問題対処への体制強化を伝えたとみられる。首相は鳥取、島根入りし出雲大社も参拝した6月14日に地方創生本部の設置方針を表明。これと前後して経済財政諮問会議は「50年後に人口1億人台維持」との数値目標を打ち出した。政治レベルで人口目標が示されたのは初めてのことである。

   ちなみに諮問会議の「選択する未来委員会」の中間整理は目標達成に向け、合計特殊出生率(13年=1.43)を30年に2.07に引き上げ、2060年人口を1億545万人程度とするよう提言している。安倍内閣は9月改造人事で地方創生担当相の新設方針を固めており、改造内閣では安保法制の整備と同時に文字通りメインテーマと位置づけられている。

   あたかも消滅リストに呼応するように政権が地方の人口問題に敏感に反応した背景には先述したように統一選への意識がある。これまで安倍内閣はデフレ対策として推進した公共事業への積極路線以外、分権改革を含め地方を重視した発信が不足していた。

   だが、それだけが理由ではあるまい。第2次安倍内閣の成長戦略は国家戦略特区構想にみられるように首都圏、関西圏など大都市圏重視に偏向していたきらいがある。ところが戦略特区構想は成長の起爆材としての効果を発揮しきれているとはいいがたい。加えて2020年東京五輪開催に向けたインフラ整備などを通じた「東京集中」加速への懸念も意識されつつある。

   そんな中で「消滅リスト」は政権にとってむしろ渡りに舟だった。創成会議分科会には財務、総務両省事務次官経験者が名を連ね、先述した山崎氏らも参謀的存在として関与したとみられる。実態として霞が関が裏打ちした内容であり、単純な民間ベースの提言ではない。第2次安倍内閣の経済、内政運営の基軸だった「大都市圏・成長・構造改革重視路線」に対して中央官庁が人口減少問題を足がかりに巻き返しに動いたともとれる。

   統一選対策に加え大都市圏重視路線の行き詰まり、さらには中央官庁の主導権争いなど複雑な要素が絡んでの地方の人口減少論議であることに注意しなければならない。たとえば次期国会提出の関連法案や来年度予算の特別枠がいたずらに統一選対策の色合いを強めれば、腰をすえた地方の人口減少対策とはかい離するおそれがある。地方創生というテーマ自体に「ばらまき」イメージがしみつかないかが最初の重要な関門になる。

   ちなみに秋の臨時国会では従来の大都市圏重視の象徴である議員立法のカジノ解禁法案と、地方創生関連法案の両者が現時点で2大焦点と目されている。ある意味で皮肉な巡り合わせを感じる。

論点1―守備範囲はどこまでなのか

   そのうえで、地方創生本部による来年度から5年間の総合戦略、さらに長期戦略の取りまとめの内実が問われる。4点にわたり今後注目されるポイントと論点を指摘したい。

   第1の問題は「地方の人口問題」の守備範囲をどこまで広げるかだ。大都市圏の少子化問題がいわゆる待機児童対策など子育て支援に軸足が置かれるのに対し、地方の人口問題は狭い意味の少子化対策に限定されず、雇用安定など地域再生、地域活性化そのものが課題となる。本気で取り組むとすれば文字通り政府と地方を挙げた取り組みが必要なテーマである。

   人口減少問題においては外国人労働者や移民政策の位置づけも現実には影響する。創成会議は移民政策と分離した形で提言を公表したが、先述した諮問会議の「選択する未来委員会」の議論の過程では移民を年間20万人受け入れる前提で人口1億人を維持するとの内閣府試算がいったん示され、論議を呼んだ。「50年後も1億人」との目標は実際はかなりハードルが高いだけに移民をめぐる議論はなおくすぶっている。その場合、地方の人口政策にも影響を与える可能性がある。

   また、地方の人口問題は首都・東京のあり方と無関係に論じられない。東京はこれから急速な超高齢化に突入し、2020年五輪開催の5年後に東京の75歳以上の高齢者は何と約200万人に達する。都の試算では20年をピークに人口も減少に転じ、2060年には人口が今より300万人減少する。

  現在ですら特別養護老人ホームの入居「1000人待ち」の特別区がある中、どのように医療、介護、福祉の担い手を確保するかは極めて深刻な課題だ。一方で地方は逆に超高齢化に対応する要員ピークを過ぎつつある。東京の超高齢化について厚生労働省は地域包括ケアによる対応を強調するが、このままでは多くの若年労働力がさらに東京に吸収されかねない。

論点2―「少子化」「東京集中」対策をどう融合するのか

   「少子化対策」「東京集中是正」をどう連動させていくかは難しい課題である。言うまでもないことだが地域の状況は千差万別であり、画一的に対策をあてはめればいいというものではない。

  しかもおそらくその効果は1年、2年単位ですぐ「目に見える」ものでもない。「これまで単発で『点』だった政府の地域支援策を『線』につなぎたい」と政府関係者は語るが自治体の創意と地域の多様性を前提としなければ限界がある。

  少子化に関しては全国知事会が7月にまとめた提言「次世代を担う『人づくり』に向けた少子化対策の抜本強化」や政策トータルプラン、さらに12県が参加した「子育て同盟」の活動など地方側の取り組みに政府は留意すべきだ。提言は①出生率向上②地方での若者の定住促進③子育てにシフトした税制改革の3本柱で構成。出生率に関してはいわゆる「婚活」への支援や地方の医師確保、不妊治療の充実、教育費用の低減などを求めた。

   たとえば政府は13年度補正予算で「地域少子化対策強化交付金」として結婚に向けた情報提供や相談体制などいわゆる「婚活」支援に30億円の助成金を計上した。国が補助金まで出して婚活を後押しする効果を疑問視する声もあったが全都道府県から引き合いが来るなど人気度は高い。一方で地方からは交付金にパーティー経費への使用は不可など使い道に制限があるため「活用しにくい」との苦情もある。地方側が求めるような自由度が高い「基金」を設けるかがポイントとなる。

  「東京集中」に関し創生本部が手がけるとみられるのは大都市圏から地方への若者らの移住支援だ。窓口あっせん機能の強化や、都会の若者が一定期間、地方で地域づくりを支援する「地域起こし協力隊」制度について、将来の定住効果も期待しての拡充などが図られる。

  少子化、人口流出防止対策双方ともに安定した雇用の創出が前提となる。地域の実情に応じた産業育成、地方に企業が拠点を置きやすいような税制の構築、6次産業化など競争力のある農林水産業の展開、女性の雇用の場確保などいずれも「言うは易く行うは難い」課題が山積する。

  なお、7月の全国知事会議では高校卒業と同時に地方の若者が大都市圏の大学に吸収されてしまう実態から、地方大学の強化を訴える声が相次いだ。大いに検討されるべきテーマのひとつだろう。

論点3―「拠点」をどう考えるか

   人口減少時代における地方の「拠点」をどう考え、整理していくかも大きな課題となる。すでに総務省、国土交通省などが検討を先行させている。だが地方側、とりわけ町村には今回の動きが地方制度の見直し論に連動することへの警戒感も強い。デリケートな問題だけに、政府も舵取りに慎重を期すことになりそうだ。

   人口減少と財政難の下で地域や自治体が住民の生活圏や住民行政機能を維持していくため、中央官庁はすでに拠点構想の検討や実現に着手している。

  総務省は第30次地方制度調査会答申を踏まえ「地方中枢拠点都市」構想の実現に動いている。3大都市圏以外で人口20万人以上、昼夜人口比率1以上の高度な自治体機能を持つ拠点都市を選び、医療、介護、教育などの機能を集約する構想だ。周辺市町村の機能を補完するかわり、国は地方交付税の上乗せによる支援を行う(図3)。

図3 地方中枢拠点都市の候補

(出典)総務省資料(http://www.soumu.go.jp/main_content/000256142.pdf)。

   同構想の実現に向け、さきの通常国会で成立した改正地方自治法には自治体同志が言わば「条約」を結ぶことで直接機能を補完しあえる連携協約制度が盛り込まれた。総務省は地方中枢拠点都市のモデルとして政令市、中核市のうち姫路、盛岡、倉敷、広島、福山、下関・北九州、熊本、宮崎の9市をすでに選定している。

   改正地方自治法では同時に、都道府県による過疎町村などの事務の代行を念頭に置いた代替執行も制度化されている。代替執行の場合、行政事務はあくまで町村の名において行われる。都道府県が管理執行にあたるものの、その効力は町村に帰属する。

   一方、国土交通省は「国土のグランドデザイン2050」を取りまとめ、人口減少対策として人口30万人規模の地方都市圏を維持する「高次地方都市連合」を打ち出した。

   同省は自動車で60分以内で移動し得る圏域を「都市圏」としたうえで、人口30万人規模の維持が高度な都市機能のためには必要とした。現時点でこうした圏域は61あるが人口減少で2050年には18都市圏で「30万人」確保は困難だと分析している(図4)。ちなみに18都市圏は△函館(北海道)△旭川(北海道)△帯広(北海道)△苫小牧(北海道)△青森(青森)△弘前(青森)△鶴岡・酒田(山形)△いわき(福島)△日立(茨城)△那須塩原(栃木)△鳥取(鳥取)△米子(鳥取)△周南(山口)△山口・防府(山口)△丸亀(香川)△新居浜・西条(愛媛)△佐世保(長崎)△都城(宮崎)を指す。

図4

(出典)国土交通省資料(http://www.mlit.go.jp/common/001047115.pdf)。

   そこで、高速交通ネットワークの整備や既存高速道の活用で2050年で60~70の30万人都市圏を維持しようというのが「高次地方都市連合」の眼目である。集落が散在する山間地域などは約5000の「小さな拠点」を設け、生活拠点とするよう提言した。

  地方創生本部が今後取りまとめる中長期ビジョンでは各省が走り始めた「拠点」をどう捉え、整理していくかが問われる。ただ、先述したように町村には人口減少問題が「選択と集中」に向かうことへの強い警戒がある。こうした議論がさらなる市町村の合併圧力につながり、さらに道州制導入など地方制度論議に連動することへの懸念である。

  加えて政府の第31次地方制度調査会は今後、人口減少に対応した自治体のあり方について議論することになっている。「小さな拠点」をめぐる議論を地方創生本部が進める場合、こうした作業との兼ね合いも考慮しなければならない。

  とはいえ人口減少の下で「拠点」論議はやはり避けられないだろう。本当に市町村合併に連動するかも冷静に見極める必要がある。たとえば総務省が自治体の連携強化に舵を切ったのは「平成の大合併」第2弾のような規模拡大では人口減少に対応できず、非現実的だと見極めをつけたためだった。

   都道府県による町村の事務代行も事実上、現行地方制度の存続を前提にした制度だ。実際に今回の議論が市町村合併への圧力につながるとすれば、それは地方交付税の圧縮論議という形で表れる可能性が強い。地方はこの点にこそスクラムを組むべきであろう。

追記2

   9月12日、地方創生本部初会合で基本方針が決定された。①若い世代の就労・結婚・子育ての希望の実現②「東京一極集中」の歯止め③地域の特性に即した地域課題の解決という3つの基本的視点を盛り込んでいる。この中で「地方中枢拠点都市及び近隣市町村、定住自立圏における地域連携を推進し、役割分担とネットワークを形成することを通じて、地方における活力ある経済圏を形成し、人を呼び込む地域拠点としての機能を高める」と明記された。つまり、総務省構想について創生本部は推進のレールを敷いたことになる。 

論点4―地方はどう参画するのか

  最後に示すポイントは地方側がどう、主体的に「地方創生」に関与していくかだ。政府が年末を目途にビジョンを策定するにあたり、地方が参画していく枠組みがきちんと構築されるかが問われる。地方創生本部が始動するにあたっての大きな焦点であろう。

  「消滅リスト」をめぐっては今回、全国知事会の反応も早く、7月に佐賀県唐津市で開かれた全国知事会議では人口減少を「国家の基盤を危うくする重大な岐路」と訴えた非常事態宣言が採択された。政府の動きと連動した積極姿勢はかつての「三位一体の改革」以来とも言える。東京集中是正や拠点に関する議論は地方間でも利害関係が対立しやすい。地方レベルでどこまで意見集約ができるか、地方側の努力もまた問われよう。

  改めて指摘するが、人口減少問題への対処といっても地方の状況は多様だ。「札仙広福」に代表されるブロック拠点都市の強化を議論するのであれば、東京からの機能移転や支店経済からの脱却は欠かせない要素となる。農林水産業を主体とする地域であれば最近注目を集めている地産地消型のいわゆる「里山資本主義」による取り組みも魅力的な選択肢となる。「あれか、これか」ではなく多様な取り組みを前提とすべきなのだ。

   地方の人口減少に正面から取り組むには地方の独力対処には限界があるという認識が今回の政府対応の背景にあることは事実だ。だが、多様な状況に対応するためには分権的アプローチが必然的に求められるはずだ。

   すでに多くの町村の取り組みが報じられているように、ヒントは常に地方にある。今回の議論をいたずらに警戒するだけでなく、地域主導のまちづくりを可能とするさまざまな法整備に結びつけていくようなしたたかさと戦略が地方側にも求められている。

 


人羅 格(ひとら・ただし)毎日新聞論説委員。北海道札幌市生まれ。東北大法卒、85年毎日新聞入社。89年から政治取材に携わり官邸キャップ、政治部デスクなどを経て現職。

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