南アルプスにおける高山植物保護への取組み

 静岡県、山梨県、長野県の3県にまたがる南アルプス国立公園の南部地域は、ほかの山岳地域に比べ現地までのアプローチが長いことから、国立公園の中では利用者が少ない地域となっており、このことにより壮大な自然が守られ、ライチョウ生息域の南限として、また氷河地形が残存しているなど、学術的にも貴重な価値を有し、注目を集めています。
 現在、最も緊急な課題は、ニホンジカによる高山植物の食害対策で、これまで高山帯にはニホンジカはあまり生息していないと考えられていましたが、最近の調査では、生息数が増加し南アルプス全域に分布していると推測されています。そのため、一部ではお花畑が消失しており、このまま推移すると高山植物をエサとするライチョウや高山蝶が絶滅するなど、取り返しのつかない自然環境の変化を招くおそれがあります。
 このため、ニホンジカ対策として、静岡県と南アルプス高山植物保護ボランティアネットワークとの協働により、お花畑の植生復元活動としての、防鹿柵(ぼうろくさく)の設置等を実施しています。防鹿柵は、貴重な植生を柵で囲いニホンジカの食害の影響を排除するもので、聖平(ひじりだいら)、三伏(さんぷく)峠、茶臼(ちゃうす)小屋周辺で実施しており、聖平では消滅したと思われていたニッコウキスゲが12年ぶりに開花するなど、効果が現れています。
 今後、県では、山岳地の生態系の一部を構成するニホンジカを守りつつ高山植物の保護を行うため、ニホンジカの生息数を明らかにし、適正な密度管理をするなど抜本的な対策を、試行錯誤を重ねながらボランティアの方々との協働で進めるとともに、国や近隣の県、土地所有者等関係者とも連携し、南アルプスの保全に努めていきます。

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ボランティアによる防鹿柵の設置