文字教育の拠点として~白川文字学 白川静博士生誕100年~

 「口」のつく漢字の中には、「くち」という意味だけでは字の成り立ちが説明できないものや、矛盾が生まれるものが数多くあります。
 この問題に終止符を打ったのが、漢字研究の第一人者として有名な白川静博士による「 sai.JPG(サイ)」の発見でした。
 sai.JPGとは、祝のりと詞(人が神に願い事をするために書いた文)を入れる器の形です。白川博士が古代の人々の暮らしをもとにsai.JPGを発見し、「口」の部分を、神にささげる祝詞を入れる「器」と読み解いたことにより、これまで疑問を持たれていた多くの漢字の成り立ちや文字の系列が明らかになりました。
 白川博士は明治43年(1910年)4月、福井市でお生まれになり、苦学の末に中学校の教師を経て立命館大学教授となり、その後、生涯をかけて中国の古代文化と漢字の研究に打ち込まれました。古代中国の人々の生活や意識にまで踏み込んで漢字の成り立ちを解明され、「白川文字学」という文字学の体系を確立。字書三部作「字統」・「字訓」・「字通」を完成させるなど精力的な研究活動を続け、平成14年には福井県県民賞、平成16年には文化勲章を受章されました。
 福井県内の小学校では、児童が漢字の意味や成り立ちを学ぶことによって漢字のおもしろさや奥深さを理解できるようにと、この「白川文字学」を取り入れた漢字解説本や副読本など、本県独自の教材を活用して授業を行っています。
 また、県立図書館には「白川文字学の室(へや)」、こども歴史文化館には「白川静漢字ワールド」を開設するなど、その業績を紹介したり、パズルやアニメーションで漢字の成り立ちが学べるようになっています。
 白川博士の生誕100年を迎えた4月には「記念フォーラム」を福井市で開催し、古代文字の揮毫や本県の漢字教育の実践発表、松岡正剛氏による講演などを行いました。
 さらに、県内だけではなく東京でも広げようと、今年1月、白川文字学の教育講座を開催したところ、熱心な質問が数多く出るなど高い関心が示されました。そこで、4月から6回シリーズで立命館大学と連携し、本県のアンテナショップである「ふくい南青山291」で公開講座を開いています。
 7月には、独自の漢字教育の実践家による公開授業や、パネルディスカッション「漢字スタジアム in 福井」、漢字文化を持つ東アジアの方々が一堂に会する「漢字シンポジウム」を開催するなど、「文字の国 福井」を世界に向けて広げていくことにしています。
 白川博士を始め、由利公正や岡倉天心、南部陽一郎博士など、福井県ゆかりの方々の偉業を、特に子供たちが学ぶことで、郷土への誇りや自信を育んでいくことを目指しています。

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古代文字による揮毫(左が「道」、右が「若」)

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生誕百年記念フォーラムでの古代文字習字教室