本文へスキップします。

全国知事会

 メニュー

TOP委員会・本部国際会議・その他研究レポート平成26年度平成26年11月 「女性も男性も共に働き共に育むことのできる社会」の実現に向けて

平成26年11月 「女性も男性も共に働き共に育むことのできる社会」の実現に向けて

山形県子育て推進部若者支援・男女共同参画課

1  全国知事会男女共同参画プロジェクトチーム報告書について

   急速な人口減少、超少子化、超高齢社会の到来により、経済成長の鈍化、国内市場の縮小、国民負担の増大の懸念については、すでに共通認識となっている。全国知事会においても少子化非常事態宣言を採択したものであるが、政府、地方を挙げて大胆な人口減少対策が求められていることは言うまでもない。

   一方、併せて今ある人的資源を最大限に活用する視点も重要である。現在の我が国においてもっと活用されなくてはいけないのが、女性、若者、高齢者、障がい者であり、中でも、総人口の半分以上を占める女性の活躍は、少子高齢化の進展した社会・経済を支えていくには必要不可欠となる。

   欧米先進国と比較し、女性の活躍が進んでいない現状やその分析は後に譲ることとし、まずは、女性が活躍できる社会をつくっていくために必要な施策について、本県知事をリーダーとする「全国知事会男女共同参画プロジェクトチーム」は「女性も男性も共に働き共に育むことのできる社会~女性の活躍 ウーマノミクスで日本を変える~」と題した提言を取りまとめ、7月の全国知事会議で了承をされた。まずはその概要について御紹介する。

 

2  現状における課題について

   報告書では、人口減少社会において日本経済を維持、成長させるために女性の活躍を推進していくにあたり、現状の課題として以下の4点を挙げている。     

 (1)我が国においては出産、子育てを理由とする離職が多い

   図1に示したように、育児・介護休業法等の整備により、こうした制度の利用者は年々増加しているものの、全体で見た場合、第1子出産後の退職率が約6割に上る構図は変わっていない。

   このため、出産・育児期に当たる30代で女性の労働力率が落ち込むいわゆるM字カーブは、年々浅くはなっているものの欧米先進国のように解消には至っていない。

   女性の労働力率と合計特殊出生率の関係をグラフ化すると、OECD加盟24カ国においては正の相関関係にあり、女性が働いても出生率は下がらずむしろ上がる結果が出ている。女性が働き家庭が経済的な安定を確保することにより、出生率は寧ろ上がるということに着目したい。

【図1】 子どもの出生年別第1子出産前後の妻の就業変化

図表:【図1】 子どもの出生年別第1子出産前後の妻の就業変化

出典:国立社会保障・人口問題研究所「第14回出生動向基本調査(夫婦調査)」

 

【図2】女性の労働力率国際比較

図表:【図2】女性の労働力率国際比較

出典:データブック国際労働比較 2014

 

【図3】 OECD加盟24カ国における女性労働力率と合計特殊出生率

図表:【図3】 OECD加盟24カ国における女性労働力率と合計特殊出生率

出典:内閣府男女共同参画会議基本問題・影響調査専門調査会報告書 参考資料図表1より

(2)女性が指導的地位に占める割合が低い

   結婚、出産で退職を余儀なくされ、女性は仕事において長いキャリアを蓄積することができないため、不利な状況に陥りがちになる。加えて、性別役割分担意識の強さから、男性と比較して重い家庭責任も背負って働くことになる。

   現在の日本は、社会全体が長時間労働を前提とした就労環境となっており、これについていくことが指導的な立場に立つ前提条件となってきた現実がある。当然のことながら女性は組織のリーダーになりにくい状況にあった。

   結果として、欧米諸国において現在3割に達する女性管理職が日本においては約1割と大きく異なる状況をつくっている。

【図4】 就業者及び管理職に占める女性の割合(2012)

図表:【図4】 就業者及び管理職に占める女性の割合(2012)

出典:データブック国際労働比較2014

(3)男性の長時間労働と家事・育児への参加時間の短さ

   図5に示されているように、我が国の男性の家事・育児に費やす時間は欧米諸国と比較して著しく低い数値となっている。

   これは、性別役割分担意識の強さや、社会全体の長時間労働に対する寛容さ等意識の問題もあるが、男性の労働時間の長さもその一因であると考えられる。

   女性の労働力率を高め、多くの女性に労働に参加してもらうためには、女性が多く担っている家事・育児の負担について、男性も応分の負担をし、仕事と家庭の両立は女性のみならず、男性の問題としても認識するとともに、それが可能な社会環境をつくる必要がある。

   なお、図6にあるように、男性の家事・育児への参加率が高まるほど、第2子以降の出生率が高まる結果となっている。

【図5】6歳未満の子を持つ夫の家事・育児時間(1日あたり)(2012)

図表:【図5】6歳未満の子を持つ夫の家事・育児時間(1日あたり)(2012)

出典:内閣府 平成24年版 男女共同参画白書

 

【図6】子どもがいる夫婦の夫の休日の家事・育児時間とこの9年間の第2子以降の出生状況

図表:【図6】子どもがいる夫婦の夫の休日の家事・育児時間とこの9年間の第2子以降の出生状況

出典:内閣府 仕事と生活の調和レポート2013

(4)労働生産性の向上の必要性

   後に示すが、日本は、労働時間は長いものの、時間当たりの労働生産性においてはノルウェーの半分以下、アメリカ、ベルギー、オランダ等と比較しても3分の2程度という非常に低い水準であり、経済成長にはまずこの労働生産性を向上させる必要がある。

   日本の長時間労働の慣習の背景は、様々な要因が重なっているものの、仕事と家庭の両立を迫られてこなかった男性中心の価値観、意識が色濃く影響している部分が否定できない。

  

   以上のことを踏まえ、女性の活躍推進により、女性の意識や視点が加わることで、労働生産性を向上させ、欧米並みの労働時間を実現させる。ワーク・ライフ・バランスの向上により、人口減少にも歯止めをかける等好循環を生み出すことを目指し、以下の具体的な施策を政府へ提言した。

3  提言Ⅰ 働きやすい環境の整備

(1)企業におけるワーク・ライフ・バランスの推進

   わが国の労働者一人当たり年間平均の総実労働時間は、依然として長時間労働で、例えばオランダと比較すると364時間多く働いているが、一人当たりのGDPはオランダの方(46,773ドル 2010年)が、日本(43,118ドル 2010年)より、約8%も上である。

【図7】各国の一人当たりの年間総労働時間

図表:【図7】各国の一人当たりの年間総労働時間

(出典)データブック国際労働比較2014

 

【図8】OECD加盟諸国の年間一人当たりの労働生産性

図表:【図8】OECD加盟諸国の年間一人当たりの労働生産性

(出典)日本の生産性の動向 (公財)日本生産性本部

                                                                                                                                                                   

   他の先進諸国と比較しても、日本の労働生産性は低いと言わざるを得ず、今後人口減少が続くと予想される中、労働生産性を上げていく必要がある。

   このために何より必要であるのが、大胆な意識改革である。

   これまで日本は、終身雇用、年功序列、企業別組合という日本型経営の影響もあり、経営者、管理者層はもちろん労働者側にも、長時間労働イコール頑張っているとしてプラスの評価をする意識があった。

   また、1970年代から80年代において家事、育児、介護についても第一義的には家庭の責務とし、専業主婦がこれを担うことを想定した「日本型福祉制度」を目指した時期もあり、これが男性の長時間労働に拍車をかける側面があった。

   女性の活躍を推進していくためには、こうした長時間労働を前提とした働き方の意識を変えていくことが必要である。経営者は、労働者を女性であろうが、男性であろうが労働力の再生産である、家事、育児、介護に対しては等しくその責任も、権利も持つ個人として捉え直す必要がある。

   これを踏まえてまず、最重要課題として「長時間労働の縮減に向けた取組みの強化」が必要であり、このために具体的に以下の2つの施策を提言した。

 

  1.  時間外労働の一定の上限時間の設定や時間外手当の単価のアップ
  2.  ワーク・ライフ・バランス等における優良企業の取組みの「見える化」

 

   なお、前にも述べたとおり根本的な課題は意識改革であり、すでに経団連の女性活躍アクションプランにも記載されているが、まず企業において決められた時間内で業務を完結する働き方に改め、そうした働き方が評価されるよう評価軸を変えることが求められる。

 

(2)就業継続のための支援の取組み

   女性が、第1子の出産により約6割が仕事を離れる実態については先に述べた通りで、出産後も就業継続できるようにすることが必要となる。

   現状においては、育児休業などの制度は整ってきたものの、小規模事業所や非正規雇用には取得しにくい状況にある。

   また、育児休業を取得しても、復職について不安を感じる女性も多く、研修や情報提供等の配慮が必要な状況にある。

   こうした現状を踏まえ、就業継続のための課題への対応として、多様な働き方が選べる職場環境を整備すること、特に育児休業制度の普及が遅れている中小企業への支援、復職にあたっての不安解消のための支援体制の整備を中心に、以下の8項目の施策を提言したものである。

 

  1. スムーズな復職に向け、育児休業中のスキル維持のための研修への支援拡充
  2. 改正次世代育成支援対策法に基づき新たに設けられる「特例認定」(プラチナくるみん)について、優遇税制などの効果的な企業支援制度の創設
  3. 短時間勤務正社員制度の導入促進
  4. 中小企業が育休代替職員を雇用した場合において、助成金制度の支給額増額や優 遇税制の創設
  5. 100人以下の中小企業を対象とした、現行くるみん制度の認定要件・手続きの簡素化
  6. 女性の就業継続のロールモデルやメンターの育成に対する支援
  7. 職場風土を醸成するため、経営者、管理職の意識改革に向けた取組みの推進
  8. テレワークなど場所と時間に縛られない、多様で柔軟な働き方の推進に向け、地方の起業における導入に対する支援の拡大

 

(3)再就業のための支援の取組み

   子育てが一段落した後、再び仕事をしたいという女性の潜在的なニーズは高いが、再就職にあたって、育児との両立やキャリアのブランクによる知識やスキルの不足などに対する不安がつきまとう。

   また、起業する場合においても経営に対する知識やノウハウの不足、事業に必要な専門的な知識の不足などの課題を抱えている。

   こうした不安を解消するために山形県においては今年9月に、ハローワークのマザーズコーナーと連携した一体型の施設として、マザーズジョブサポート山形を山形市内に設置した。

   マザーズジョブサポートでは、相談員を配置し、仕事と子育ての両立、再就職に必要なスキルアップ、適性診断、キャリア形成アドバイスなどに関する総合相談を受けることができるとともに、就職・仕事と子育ての両立などに関する各種セミナーを受講、ひとり親自立支援、看護師や介護士、保育士等専門職の就職に係る相談等を受けることができる。また、こうした相談を受けている間や就職面接時には保育士による託児サービスの提供が受けられる。

   こうした、一体型の施設は現在全国でもまだ数か所しかない。ハローワークのマザーズコーナーも全国544のハローワークのうち、179箇所、全体の約3割の設置状況である。

   また、中小企業庁において創設した「主婦インターンシップ制度」は再就職を希望する主婦には非常に有効な制度である。しかし、就業を希望する主婦の数は全国で300万人以上に対し、受入枠5,000人であり、検討が望まれるところである。

   以上のことから以下の3項目について提案を行った。

  1. 女性の再就職に向けた相談窓口の拡充や起業支援のため、都道府県が地域の実情にあわせて独自に取り組んでいる事業への支援
  2. 544箇所全てのハローワークへのマザーズコーナーの設置
  3. キャリアブランクが長い人も柔軟に利用できるような職業訓練制度の構築や、主婦インターンシップ制度の受入れ枠の拡大など再就業支援に向けた支援措置の充実強化

 

(4)男性の家事、育児参画の推進

   女性が働くためには、これまで女性に偏りがちであった家事育児の負担を男性も担う必要がある。しかし、我が国における男性の家事、育児への参画の状況は、欧米諸国と比べ非常に劣っている。これは、日本の性的役割分業意識の強さなど社会全体の意識もあるが、先に述べた日本の長時間労働を前提とした働き方や、通勤時間が長いこともあるため、男性が参画したくともできない事情もある。

   フランスやスウェーデンは、父親が育児に積極的に参画する休暇制度を持ち、合計特殊出生率が日本よりはるかに高い。

   家事や育児は、確かに大変な労力を要するものであるが、人間の基本的な営みであり喜びでもある。父親の家事・育児参加率を高めることは、女性の活躍や少子化問題だけでなく、男性自身がこうした基本的な人間の喜びを体験できるとともに、夫婦の協力、一体感を醸成し、男性も女性もより幸福な家庭生活を送ることができる効果も併せ持つ。

   こうしたことも目指しながら、男女ともに仕事を持ち、育児にも参画する社会の実現に向けて、以下の2項目について提言した。

 

  1. 父親が育児に参画するための特別な休暇である男性育児参画制度(有給)の創設
  2. 男性従業者の育児休業取得目標の設定を一般事業主行動計画策定で義務化するとともに、育児休業取得実績の公表推進

   

4  提言Ⅱ 女性の活躍推進          

(1)指導的地位に占める女性割合の増加を図る

   現在国においても、『202030』の目標を掲げ、女性の活躍を成長戦略の中核に据え、「輝く女性応援会議」等全国的な気運の醸成に取り組んでいる。

   しかし、毎年世界経済フォーラムで発表しているジェンダーギャップ指数ランキングにおいて、日本は136カ国中105位と非常に低い水準にある。ジェンダーギャップ指数は①経済活動の参加と機会、②教育、③健康と生存、④政治への関与の4分野での男女間格差を測定しているものであるが、分野別に上位国と比較すると以下のような結果になる。

 

【図9】 ジェンダーギャップ指数ランキング国別順位2013年(世界経済フォーラム)

図表:【図9】 ジェンダーギャップ指数ランキング国別順位2013年(世界経済フォーラム)

出典:国連開発計画「人間開発報告書2013」

世界経済フォーラム“The Global Gender Gap Report  2013”

 

   日本においては、②教育、③健康と生存については、欧米諸国と同様な高い数値であるが、①経済活動の参加と機会、④政治への関与のスコアが低い。

   各分野における「指導的地位」に女性が占める割合においても、国会議員、地方議会議員、国家公務員、都道府県職員といった政治、行政の分野における指導的地位を占める女性の割合が低く、民間企業における管理職や、農業委員、自治会長といった、経済、地域における女性の活躍が少ない結果となっている。

 

【図10】各分野における指導的地位に女性が占める割合

図表:【図10】各分野における指導的地位に女性が占める割合

(出典)平成26年版男女共同参画白書

 

   そのため、各分野における女性の登用を増やすために以下のような提言を行った。

 

  1.  2020年には30%の指導的地位を女性が占めるという目標達成に向け、行政や企業における女性登用の数値目標の達成状況の公表を義務化      
  2. 企業における女性の活躍状況などの見える化とモデル企業の実例発信の強化(・例えば、中小企業における女性登用先進企業の情報の発信・企業における女性管理職登用の状況の「見える化」の推進 )

 

(2)女性人材の積極的な育成

   各国の高等教育在学率を比較すると、欧米諸国と比較し、日本の女性の高等教育在学率は低い数値となっている。欧米諸国においては、大学は入学については比較的容易であるが、卒業が難しいという事情、またいわゆるマイスター、熟練工を目指す場合、高等教育とは別の専門教育に進むなど、我が国とは大学を含めた教育全体のシステムや考え方の違いがあり、単純な比較ができないが、高等教育への在学率は軒並み女性の方が高い。

   また、高等教育在学率は、「高等教育機関の在学者数(全年齢)/ 中等教育に続く5歳上までの人口」で計算しているため、我が国においては、就学年齢がほぼ一律であるが、欧米諸国においては一度社会に出てから学校に戻る等、多様な学び方が許容されているため、これも一律に比較することが難しい。

   しかし、研究者に占める女性割合の国際比較や、大学における専攻分野別の女性の割合を見ると、女性の活躍が少ない分野において、女性人材の積極的な育成はまだまだ必要である。特に若いうちからの「キャリア教育の充実」、「理工系など女性の少ない高等教育分野への進路選択拡大に向け、理系分野で活躍している女性と女子中高生の交流会の実施や理系研究施設の体験入学の実施など」を重要と考え、提言している。

 

5  提言Ⅲ 女性の勤労意欲を高める社会システムの構築

   次に、提言の3番目として、税・社会保険制度、手当の総合的な見直しについてであるが、「夫は外で働き、妻は家庭を守るべき」という固定的性別役割分担意識は解消してきてはいるものの、男性のみならず女性においてもまだまだ根強いものがある。

   女性が活躍できる社会をつくるためには、意識改革を進め、性別にとらわれずに能力を発揮できる環境づくりが不可欠であるが、現行の社会制度そのものの中にこうした環境づくりの阻害要因になっている部分がある。

   既婚女性の給与所得者の所得分布を見てみると、20代を除いて、年収100万円付近に不自然に集中しており、税法上の控除制度(103万円の壁)、社会保険制度の適用要件(130万円の壁)、扶養手当等の制度を念頭に入れて、就業調整を行っている実態が伺える。

   こうした、税制や社会保険制度というわが国の根幹の仕組みにおいて、働くことにより損になるような、勤労意欲を削ぐ仕組みを見直し、男女共に働き、共に子育てをし、家庭を築いていける仕組みを構築すべきであり、それは同時に社会全体の意識改革や新たな社会通念の形成を進めていくことにつながる旨を提言している。

 

【図11】 既婚女性の給与所得者の所得分布

図表:【図11】 既婚女性の給与所得者の所得分布

(出典)平成24年版 男女共同参画白書

 

 

6  提言Ⅳ 「日本の未来をつくる女性活躍応援基金」の創設

   最後に『「日本の未来を創る女性活躍応援基金」の創設』について提言を行った。

   我が国の財政支出において、欧米諸国と比較し家族手当や、出産・育児休業給付といった家族関係社会支出の割合が小さい。また、各都道府県における女性の就業率や管理職の割合、合計特殊出生率などの状況は地域によってさまざまであり、こうした部分については地域事情に合った施策を地域ごとに展開していく必要がある。

   平成25年度の補正予算で地域女性活躍加速化交付金(1.25億円)が措置され、各都道府県がそれぞれの取組みを展開しているが、地域で成果を上げていくためには、継続的に施策を展開する必要があり、このため基金の創設により、ある程度長期的な視野に立った安定した財源措置を行う必要性を提言したものである。

 

7  政府の成長戦略としての「女性の活躍」について

   「女性の活躍」が政府の成長戦略における柱の一つに掲げられ、現在官民挙げて、女性の登用の拡大や、労働市場への参入促進に向けての取組みが求められており、すでに今年4月には経団連が女性活躍アクションプランを制定し、企業競争力の向上を目指して女性の活躍推進に向けた取組みを始めている。

   また、今国会に、国、地方公共団体、民間事業者(301人以上)は女性登用の自主行動計画の策定と公表の義務付けなどを主な内容とした「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律案」が提出されており、これまで紹介した全国知事会の提言内容も次々と具体的な検討に入っている。 

   しかし、歴史的にみると、欧米諸国が20世紀半ばに高負担高福祉の福祉国家を作り、保育、教育、介護といったサービスを公的に整備していった反面、財政事情により日本においてはその整備が遅れ、更に1979年政権与党である自由民主党の「家庭基盤の充実に関する対策要綱」により、家庭において主に女性がその負担を担う「日本型福祉社会」の構築に政策誘導してきた経緯がある。こうした「専業主婦モデル世帯」は、終身雇用、年功序列、企業別組合という日本型経営ともマッチして、日本は一定の経済発展を達成したものの、一方で根強い性別役割分担意識を助長することになった。

   世界経済フォーラムで発表しているジェンダーギャップ指数(2013年)において136カ国中105位というデータが示すように、日本における女性の社会進出は、政府の掛け声とは裏腹に、諸外国に比較して著しく遅れているのは、こうした経緯の影響も否めない。

   政府の方針はもちろん、施策としての制度が社会の意識を形成する側面もあり、一度つくられた意識を変えることは大きな時間と労力を要することは想像に難くない。

   流動的な社会経済状勢の変化もあったものではあるが、政府の女性に対する施策も約30年で180度転換してきており、人口減少という問題もあわせ考えれば、やはり相当強力に「女性の活躍推進」を進めていく必要がある。

 

8  「女性も男性も共に働き共に育む社会」の根底にあるめざすべき社会の形について

   「女性の活躍推進」は、 人口減少社会にあって、他の先進国に比較して少ない女性の労働参加率を高めることで経済成長を続けていくことに主眼を置く政府の成長戦略であるが、労働力の充足にとどまらず、様々な分野でこれまであまり取り入れられなかった女性の視点が活かされることで、創意工夫をもたらし、新製品、新技術の開発等イノベーションの創造や、女性が活躍できる環境を整える中で、長時間労働の是正や労働生産性の向上が図られ、仕事そのもののパラダイムシフトにより、地域の活力創成につながることも期待される。

   「女性も男性も共に働き共に育む社会」はそれに加えて、男性も家事・育児という本来の人間の営みに参画することにより、人として基本的な当たり前の幸せを実感するとともに、仕事だけでない幅広い視野も得ることができる、男性にとってのエンパワーメントでもある。

   そもそも、こうした理念はすでに15年前となる平成11年に制定された「男女共同参画社会基本法」において、男女が互いにその人権を尊重しつつ責任も分かち合い、性別にかかわりなくその個性と能力を十分に発揮できる社会の実現を目指すことを同法の趣旨とし、男女共同参画社会の実現は21世紀の我が国社会を決定する最重要課題である明言されているものであり、社会経済情勢がいかように変わろうとも、同法の理念をしっかり据えて、施策を講じていくべきであろうことを強調しておきたい。