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TOP委員会・本部国際会議・その他研究レポート平成26年度平成26年12月 「移住促進のための取組」について

平成26年12月 「移住促進のための取組」について

鳥取県未来づくり推進局

1 はじめに(これまで鳥取県が人口減少対策に取り組んで来たきっかけ)

   平成19年10月、鳥取県人口は60万人を割り込み、人口減少問題が大きくクロースアップされました。

   これまでは過疎対策として大都市への人口流出などの社会減が問題となっていましたが、現在では社会減と自然減が同時に発生しており、人口減少対策は待った無しの状況との危機感を持ち、移住・定住対策と子育て対策を同時に取り組むこととしたものです。

2 移住定住施策

【成果(移住2000人達成!)】

   鳥取県では、平成23年度からの4年間で移住者数2,000人を目標に掲げ、県のみならず、市町村や民間団体と連携して移住相談体制の充実、県外への情報発信、田舎暮らし体験機会の創出、移住者の受入体制づくり等に取り組んできました。この結果、平成25年度末までの3年間で2,172人の移住者を受け入れ、目標を1年早く達成することとなりました。移住者数は平成23年度は504名、平成24年度は706名、平成25年度は962名と年々増加しています。(平成26年度上半期は543人と更に受入数が伸びており、4年間で3,000人を超える見通しです。)また、平成19年度からの移住者数は、通算で3,335人になります。

図表:〔参考〕移住定住施策と移住者数の推移

 図表:〔参考〕平成25年度移住状況

 【主な取組①(移住相談体制の充実)】

   移住定住を促進する上で最も重要と考えているのは、移住を希望される方への相談体制の充実です。

   移住を希望される方の視点に立ち、様々な施策を検討していく必要があります。

   鳥取県では、移住に関する住宅・就職・就業等の相談を総合的かつ一元的に実施する窓口として、公益財団法人ふるさと鳥取県定住機構内に「鳥取県移住定住サポートセンター」を設置し、鳥取県内のほか、東京と大阪にも「いなか暮らしコーディネーター」を配置しています。移住を希望される方の住まい探しに専門的な対応を行うため、公益社団法人鳥取県宅地建物取引業協会と連携し、「とっとり暮らし住宅相談員」を設置しています。

   県内の全ての市町村に移住相談窓口があり、市町村の相談体制も充実しています。県では、移住定住専任相談員を設置する市町村に対して設置・活動に要する経費を支援し、市町村の移住相談体制のさらなる充実を図っており、年々、移住専任相談員が増えています。

   さらに、すでに県内に移住されている移住者に自己の体験紹介や経験を踏まえた相談対応を行っていただくため「とっとり暮らしアドバイザー」に就任していただき、移住前から移住後の相談まで、15名(平成26年11月1日現在)の方に御活躍いただいています。

   県、市町村、移住者で相互に連携して、相談者のニーズに応じてきめ細かく移住相談に応じています。

【主な取組②(情報発信)】

   「とっとり暮らし」の魅力や移住支援制度の情報発信も積極的に行っています。

   田舎暮らし等をテーマにした雑誌へのタイアップ記事の掲載、ホームページ「移住定住ポータルサイト」による情報発信、ツイッターやフェイスブックによる情報発信などを行うとともに、民間団体や市町村による情報発信の取組を支援するなど、より多くの方に対してその魅力等が分かりやすく伝わるよう、媒体の多様化や内容の充実を図っています。

【主な取組③(相談会の開催、体験機会の創出)】

   移住に関する相談会を都市部で積極的に開催しています。市町村と合同で実施する相談会では、ほぼ全ての市町村が相談ブースを出展し、移住定住サポートセンターの相談員に加え、就職、就農、起業の各分野の相談員のほか、子育て支援の県担当者、実際に鳥取県に移住された「とっとり暮らしアドバイザー」等とともに、移住を希望される相談者の方をお迎えしています。平成26年7月には、首都圏で市町村との合同による相談会を初めて実施したところ、子育て世帯の来場が目立ち、就職、起業、子育ての相談ブースが若い世代で賑わいました。

 

相談会の様子

  また、移住を希望される方に「とっとり暮らし」を体験していただくため、当県での暮らしを体験することのできるツアーを定期的に実施しています。

 

 

   加えて、移住する前に生活体験できるお試し住宅の整備への支援に取り組んでおり、市町村等による整備が進み、現在県内で14棟(平成26年11月1日現在)が整備されています。

   さらに、首都圏等の遠方の方でも低コストで「とっとり暮らし」体験をしていただけるよう、移住を希望され県内発着の航空便を利用される方に、航空運賃の半額を支援する取組も行っています。

 

図表:〔参考〕移住相談会の開催結果(平成26年7月)

【主な取組④(移住する方の受入体制づくり)】

   県では、市町村と地域住民団体等が連携して移住者を受け入れる取組をはじめ、空き家改修、家財道具処分等の取組に支援しています。

 地域住民団体等の方々が、市町村と連携して移住相談を行う、移住を希望される方に空き家を紹介する、移住者のフォローアップを行うなど地域の取組が大切です。

図表:〔参考〕移住者の住まい確保のための市町村への支援

図表:〔参考〕地域住民団体の移住促進の取組

【移住定住のきっかけづくり「とっとり集落創造シート」】

   鳥取県地域振興部は、移住定住に地域自らが取り組むきっかけをつくり、集落のコミュニティ再生を推進するため、集落住民の話し合いを促す「とっとり集落創造シート」(以下、「集落創造シート」という。)を開発しました。集落創造シートの開発には、鳥取環境大学地域イノベーション研究センター 倉持裕彌准教授及び元島根県中山間地域研究センター 赤池慎吾研究員(現 高知大学特任講師)が中心となり、鳥取県・自治体・地域住民との検討会を踏まえ、現場レベルで活用できるものにすることを心がけました。

とっとり集落創造シートの概要

  • 開発の背景

   鳥取県内の中山間地域では、過疎・高齢化の進行により、耕作放棄地の増加、生活交通機能の縮小、買い物困難地域の拡大等の課題が顕在化しつつある。さらに深刻なことは、過疎化・高齢化により、地域づくりの最小単位である集落の話し合いの場そのものが少なくなっている。

   今後、小規模な集落ほど話し合いの場が減少し、生活状況の実態把握が困難になることが予想される。

 

  • 開発の目的

   鳥取県では、このような社会背景を踏まえ、集落の状況を客観的に把握し、集落の能動的な話し合いを促進することを目的に、集落創造シートを開発した。

 

  • とっとり集落創造シートの構成

   集落及び複数集落による地域づくりを促進するためには、集落の将来の姿(人口、高齢化率等)をしっかりと把握し、集落の生活状況を共有しながら、集落の「良いところ」「困りごと」を把握することが大切である。集落の話し合いによる合意形成を経て、集落の目指す地域づくりの方向性を探る。

   集落創造シートは、以下の7つのシートから構成されている。

  1. 集落(人口推計):人口に関する9つの指標を集落単位で「見える化」しました。現状~30年後の人口、増減率、小・中学生数等を表示しています。
  2. 集落(シミュレーション):10年後も今と同じ人口を維持するために必要な定住人口を見て、集落で取り組みを考えます。
  3. 広域(人口推計):人口に関する9つの指標を公民館や小学校区等単位で「見える化」しました。現状~30年後の人口、増減率、小・中学生数等を表示しています。
  4. 広域(シミュレーション):10年後も今と同じ人口を維持するために必要な定住人口をみて、複数集落による広域範囲で活動を考えます。
  5. 集落の生活:現在の集落の状況と20年前の状況を確認し、暮らしの課題や魅力を話し合い、暮らしの困りごとや良いところを見つけよう。
  6. 確認・点検:地域づくりの状況を「できている」「やってみたい」で確認し、今後のさらなる推進を促す。
  7. 履歴:話し合いの内容や気づきを記録し、情報を共有する。

 

図表:とっとり集落創造シートの画面の例

とっとり集落創造シートの活用状況

   平成26年11月現在、鳥取県内12市町659集落分のシートが整備され、集落や広域的地域運営組織で活用されています。

 

  • 集落での活用事例

   西伯郡伯耆町では、23集落の区長に集落創造シートを配布し、地域状況の説明を行った。

   同町三部二区集落では、集落活性化計画づくりに集落創造シートを活用している。「集落(人口推計)シート」では、集落の将来人口を共有し、話し合いを推進するきっかけになっている。また、「確認・点検シート」により、集落の課題を見える化し、地域課題を確認した。今後、年明けを目処に集落活性化計画の策定が行われる見込みである。

 

  • 広域的地域運営組織での活用事例

   西伯郡南部町あいみ富有の里地域振興協議会は、広域的地域運営組織としての地域づくり活動を進めている。あいみ富有の里地域振興協議会では、遊休農地解消に取り組む検討会の場でとっとり集落創造シートを活用している。検討会では、行政担当者(南部町職員、県職員)が中心となり、「確認・点検シート」を活用して地域の状況について点検・確認することで、課題についての情報共有を図っている。

 

  • 県の支援

   集落や地域振興協議会での話し合いにおいては、関係市町に加えて県職員(総合事務所中山間地域振興チーム)が積極的に出席し、話合いの進め方について助言するほか、先進事例等の関連する情報を提供するなどの支援を行っている。

今後の取組

   「シミュレーション」シートでは、集落ごとに10年後も今の人口を保つための定住組数を示し、移住定住の話し合いのきっかけとなるようにしており、その組数は各集落ごとに固定されています。しかし、現在の人口を維持し続けることが難しい集落も存在し、集落が自ら実情に合わせて定住組数を設定できるようプログラムの改修を進めているところです。

   今後とも、鳥取県としては、各市町と連携しながら、住民自らが集落の将来の姿を認識し、移住定住などを通じた地域おこしの取り組みに自ら踏み出すきっかけづくりとしてこの「とっとり集落創造シート」の普及を進めていきます。

 

【主な取組⑤(若者の県内就職(IJU(移住)ターン)】

   当県では、企業誘致についても積極的に行っています。高規格道路網の整備による都市圏とのアクセス向上や、また近年は大規模災害リスクが低いことによるリスク分散の適地として、企業誘致件数が増加し、大幅な雇用の創出につながっています。

   鳥取県技術人材バンクを運営し、県内のほか東京、大阪にコーディネーターを配置し、求人企業と技術系求職者のマッチングを行っています。また、IJUターン就職のためのスタッフを東京、大阪に配置し相談者の状況を的確に把握しながら、相談等に対応しています。

   また、大学生やその保護者向けに県内就職情報をメルマガ等により提供したり、関西圏の大学とUターン就職を促進するための協定を締結するほか、県内企業の見学会や、県内大学等と連携し県内企業の説明会を開催するなど、県内企業の人材確保を促進しています。

 

【主な取組⑥(農林水産業に従事する移住者(若者)の増加)】

   当県の農林水産業は高齢化の進展により担い手不足が慢性化しています。そのような中で当県の農林水産業を支えるための新規就業者の確保は喫緊の課題となっており、様々な施策を講じているところです。

   農業分野では、県農業農村担い手育成機構が新規就農希望者を研修生として雇用し、給与を受け取りながら先進農家での実践研修を行う「鳥取へIJU!アグリスタート研修事業」のほか、営農に必要な機械・施設の導入に対して助成を行う「就農条件整備事業」などの支援策を行っており、過去5年間ではIJUターンの方74名が就農しています。

   また、漁業分野では、新規漁船員等を雇用し研修を実施する事業者に対する支援を行う「漁業雇用促進対策事業」、林業分野では、就業希望者を新たに雇用する事業者に対する支援を行う「鳥取県版緑の雇用支援事業」「木材産業雇用支援事業」などを行っています。

   農林水産分野での担い手確保支援策を講じることにより、平成22年度以降新たに農林水産業に就業する者は増加傾向にあり、平成25年度では200名を超える新規就業者があるなど、当県の農林水産業を支える担い手として活躍して頂いています。

図表1:〔参考〕農林水産業に係る若者の定着、移住定住等にかかる県の施策(1)新規就業の支援

図表2:参考:新規就業者数の推移

図表3:〔参考〕農林水産業に係る若者の定着、移住定住等にかかる県の施策(2)担い手の育成(主なもの)

3 子育て王国

   鳥取県では平成22年9月に「子育て王国鳥取県」を建国宣言し、以後小児医療費助成の拡充、保育体制の充実、多子世帯の保育料軽減など様々な子育て支援策に取り組んできました。その結果、平成20年の1.43(全国17位)まで下がった当県の合計特殊出生率は近年上昇し、平成25年に1.62(全国7位)まで回復しました。

   また、「子育て王国とっとり」の取組が定着し、女性が安心して子どもを産み、誰もが誇りと喜びを感じながら子どもを育て、子どもの成長を愛情を持って支える地域社会の実現に資することを目的として、平成26年3月に「子育て王国とっとり条例」を制定しました。

図表:これまでに取り組んできた主な県独自施策

 

【施策①(希望のかなう結婚、妊娠及び出産)】

   結婚を望む方への出会いの支援として「とっとり婚活サポーター」として県に登録いただいた企業・団体が主催する婚活イベントの情報を、県へメールアドレスを事前登録いただいた希望者に配信しています。

   また、不妊治療を受けられる方には、国の助成額に単県上乗せを行うとともに、5年間は年齢制限や回数制限を設けず単県で助成しています。

【施策②(安心に満ちた子育てと豊かな子どもの学び)】

   子育ての経済的負担の軽減につながる多子世帯の保育料の軽減や小児医療費の助成対象の拡大を行うと共に、国の支援援制度の対象とならない小規模な放課後児童クラブの拡充や病児・病後児保育への支援、国の設置基準を上回る保育士の加配について県単独で支援しています。

   少子化の危機にある中山間地域において、保育料の無償化等による子育て支援により若者の移住定住に取り組む市町村を支援しています(中山間地域市町村保育料無償化等モデル事業)。ある町では、今年の4月から子育て世帯4世帯16人が引っ越して来られました。

   また、森や里山を活用して通年型の野外保育(森のようちえん)を支援していますが、この森のようちえんを目的として海外から移住する方もあり、大きな地域の魅力となっています。今後は、鳥取県の認証制度創設を検討しています。

【施策③(安心して子育てできるための職業生活と家庭生活の両立)】

   平成16年度から男女がともに働きやすい職場環境づくりに積極的に取り組んでいる企業を「男女共同参画推進企業」として認定する制度を設け、平成26年11月現在で517社を認定し、普及につながるよう広く紹介しています。

   また、平成17年度から学校行事等へ参加しやすい半日休暇制度を設けるなど家庭教育の充実に向けた職場環境づくりを進める企業を「家庭教育推進協力企業」として平成26年11月現在で574社と協定を締結しています。

   さらに、ワーク・ライフ・バランスが推進され、安心して子育てができる就労環境の整備がすすむよう、平成26年度から男性労働者に2日以上の育児参加休暇(有給)あるいは5日以上の育児休業を取得させ原職に復帰させた事業主に10万円の支給を行っています(男性の子育てしやすい企業支援奨励金)。

【施策④(きずなを強め地域みんなで取り組む子育て)】

   毎月19日を「出会い・育児の日」として、社会全体で子育てに取り組む機運の醸成を図っています。

   妊娠中又は18歳未満の子どものいる家庭には、「子育て応援パスポート」を平成19年度に始め、現在では県内2,400店以上に協賛をいただき、割引やポイント加算などのサービスを提供していただいています。この「子育て応援パスポート」は、現在、島根県、広島県、関西各府県(三重、滋賀、京都、大阪、兵庫、奈良、和歌山、徳島)と連携し、お互いの地域での利用が可能となっています。

   また、県内の個人・団体・企業の皆様に、自らできる範囲で子育て支援に取り組んでいくため、「とっとり子育て隊」を平成22年度に創設し、現在4,000を超える、個人・団体・企業の皆様に登録いただいています。

【施策⑤(特に支援が必要な子ども・家庭の健やかな生活)】

   発達障がいのある子どもの幼児期から青年期までのライフステージに合わせた支援体制を推進するため、発達障がいの診断後早期に保護者が相談できる体制の整備、適切な子育ての仕組を学ぶ機会の提供(ペアレント・トレーニング)及び思春期・青年期の相談に対応できる人材の育成に取り組んでいます。

 

4 おわりに(今後の地方創生に向けた取組について)

   当県独自の人口推計を行った結果、2040年における人口は、国立社会保障・人口問題研究所の推計に比較して1万4千人の増加となる結果が得られ、これまでの移住施策・子育て施策に一定の効果があったものと考えられます。

   鳥取県は全国一人口が少ないですが、逆にコンパクトな地勢や顔が見えるネットワークなど、当県の特性を活かしながら、人口減少、地域活性化に取り組んでいく必要があります。

   地方創生時代の先陣を切る鳥取県として、今後とも各種施策を実施し、県民の皆様に活力と安心を実感していただけるよう取り組んでいきたいと考えています。