立山御前沢の万年雪、日本初の氷河の可能性

 富山県の北アルプス立山連峰・雄山(3,003m)の東側、御前沢雪渓にある日本最大級の氷体が、現在でも流動している「氷河」である可能性が極めて高いことが立山カルデラ砂防博物館の調査により分かりました。
 氷河とは、「重力によって長時間にわたり連続して流動する雪氷体(雪と氷の大きな塊)」と定義されており、これまで日本では現存しないと言われてきましたが、今回の調査により日本で初めて氷河が現存する可能性が高まり、富山県の誇る立山に学術的な価値を持つ新たな魅力が加わることになります。
 調査は昨年8月下旬から、日本最大級の万年雪である御前沢雪渓(長さ700m、幅200m、厚さ最大30m)で行いました。雪の下の氷体に達するまでドリルで11ヵ所の穴を開けポールを固定し、高精度GPS(衛生利用測位システム)でポールの位置を測量したところ、10月上旬までの約1ヵ月間で6~30センチメートル 動いていることを確認したほか、さらにその後、より精度の高いGPSで実施した測量でも、5日間で3.2センチメートルの流動を観測しました。これらの測定値により、年間の流動は2.3mになると推測されます。
 現在よりも寒かった江戸時代くらいまで、御前沢雪渓は、今よりも大きな氷河でしたが、その後、縮小しつつもかろうじて氷河として流動しているものと考えられます。
 同館では、氷河流動の特性を探るためには長期間の観測が必要であるため、今後も継続的に流動観測を進めていきます。また、氷河の可能性がある立山の内蔵助雪渓、剱岳の小窓雪渓、三ノ窓雪渓での観測も実施するほか、御前沢の氷体から氷を採取し、その形成年代や古環境を調査することで、立山の特殊な自然環境を明らかにしていきたいと考えています。

お問い合わせ
財団法人立山カルデラ砂防博物館
電話番号 076-481-1160



        調査の様子(左)と御前沢雪渓の全景(右)