新エネルギー産業立県を目指して
秋田県は豊かな自然と広大な県土に恵まれ、農産物や森林資源のほか、石油天然ガス・レアメタル等の鉱物資源など、資源を供給する県として歴史を歩んで来ました。近年は電子部品・デバイス製造業のほか、非鉄金属や化学工業などの素材関連製造業、鉱山技術を活用した非鉄金属リサイクル産業が集積しており、これらは、我が国の強みである高付加価値工業製品の基礎を支えるものとして、重要な役割を担っています。
このように様々な資源を供給している秋田県ですが、加えて国民生活や産業活動に欠かせない「電力」の供給県でもあります。原子力こそないものの、既存の火力発電所や多数の水力発電所に加え、風力発電では全国5位、地熱発電では全国3位の導入量となっています。広大な県土には風況や地熱資源が有望な未開発地域を多数有するほか、その広さを生かし大規模太陽光発電の立地も期待できます。これらの多様で豊富なエネルギー資源をバランスよく組み合わせた場を提供することによって、地球温暖化対策に配慮した活力ある地域づくりを目指しています。
今後新エネルギー機器、省エネルギー機器の市場が拡大していくと、それらの機器に使用される多様なレアメタル、レアアースの調達が困難になることが懸念されます。そう遠くない将来には、貴重な資源を大量にリサイクルするシステムが必要となりますが、県内にはそのための技術を有した企業が集積しています。また、ダイオードなどのパワーデバイスとその素材、パワーコンディショナやインバータ等のパワーエレクトロニクス機器も新エネルギーの利用には欠かせないものですが、県内にはこれらに使用する電子部品の製造企業も集積しています。今後伸びていくこれらのような新エネルギー関連企業が研究開発に取り組める場を先駆けて構築するとともに、あわせて再生可能エネルギーを軸とした電力供給県となることで、県民利益を追求し、我が国の他の地域にも貢献していきたいと考えています。
プロジェクトの一つとして、直流給配電技術を研究開発する直流グリッド技術実証を産学官で実施しています(下図)。家庭用の電気製品には内部で直流電流を使用しているものがありますが、交流電流から変換する過程で電力ロスが発生しています。これを避けるとともに、風車や太陽電池が作った電力を蓄電池などを介して効率よく使用するため、直流のまま給配電して使おうという試みです。この実証では、電力需給バランスや蓄電池残量などを制御する技術や、高効率の直流コンバータ実用化などの成果が期待されています。
このほかにも関連産業を巻き込んだ大規模ウインドファームの立地や、積雪寒冷地における電気自動車の走行フィールド整備を通じた社会実証の実施など、新エネルギー関連産業を幅広く支援するという産業戦略の下、各アクションプランをスタートさせています。