「高志(こし)の国(くに)文学館」来年夏開館~「ふるさと文学」の振興に向けて~
「立山(たちやま)に 降り置ける雪を 常夏に 見れども 飽かず 神(かむ)からならし」
(万葉集・巻17・4001)
古くは奈良時代、越中国守として赴任した大伴家持が、万葉集で223首もの越中ゆかりの歌を詠んで以来、富山ゆかりの文学作品が数多く生まれています。これまで、富山県からは堀田善衞、角川源義、源氏鶏太、木崎さと子など多くの優れた作家が輩出されているほか、宮本輝の『螢川』、柏原兵三の『長い道』、新田次郎の『劔岳 点の記』など、本県を舞台とした多彩な文学作品が生み出されてきました。
万葉集にも詠まれた立山連峰
富山県では、本県の美しく豊かな自然や風土の中で育まれてきたこれらの文学作品を「ふるさと文学」として、郷土の歴史や文化を再認識し、継承・発展させていくための県民共有の大切な財産と考え、ふるさと文学の振興に取り組んでいます。
その拠点として、来年夏の開館を目指し整備を進めている文学館について、このほど条例が制定され、正式名称が「高志(こし)の国(くに)文学館」に決定しました。「高志(こし)の国(くに)」という言葉には、越中万葉の時代から約1300年の富山県の悠久の歴史の時間軸と、越前・越中・越後といった現在の富山県の区域を越えた広がりのある地域軸が表現されており、また、今の時代に一番必要な"高い志"という意味も込められています。
また、あわせて、開館時間や休館日、観覧料など、文学館に関する管理運営の基本的な事項を決定しました。
「高志(こし)の国(くに)文学館」の完成イメージ
文学館は、「ゆかりの作家や作品をわかりやすく紹介するふるさと文学の総合窓口」、「文学作品のみならず、絵本、映画、漫画、アニメなど幅広い分野の作品を気軽に楽しみ学ぶ機会を提供」、「深く調べる・発表する・創作する刺激ともなる場の提供」の三つを基本理念に、幅広い世代の人たちが気軽に何度でも行きたくなるような施設を目指しています。この文学館は、富山市中心部のアクセスしやすい場所に位置し、平成21年3月に廃止した知事公館を増改築して有効に活用し、効率的に魅力ある施設整備となるよう配慮しています。
開館年度の企画展については、「大伴家持と越中万葉」、「富山を描く映画の世界」、「藤子不二雄a.の世界」を開催する予定であり、子どもから大人まで、ふるさと文学に親しんで、楽しく学ぶことができるよう、現在その準備を進めております。
また、文学館には、「ラ・ベットラ・ダ・オチアイ」(落合務シェフ)の出店が決まっており、ふるさと文学の魅力だけでなく、海山の幸に恵まれた地元富山の食材を生かした美味しいイタリア料理も多くの方々に楽しんでいただきたいと考えています。
県では、文学館の開館に向け着実に整備を進めていくとともに、各種県民講座などの催し物やふるさと文学情景作品の募集、貴重な文学作品の収集・保存・展示など、今後も子どもから大人まで、より多くの方々がふるさと文学の魅力に触れ、親しむことができる環境づくりを進めていきます。
【お問合せ】
富山県生活環境文化部 文化振興課
電話番号 076-444-8929