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タイトル | 県下水道局と県内全市町村、下水道公社による広域的な連携 |
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施策・事業名称 | 下水道事業の広域連携のためのプラットホームの構築 |
都道府県名 | 埼玉県 |
分野 | 行財政改革 |
事業実施期間 | 平成28年11月1日~ |
施策のポイント |
○ 人口減少や施設の老朽化など、下水道事業を取り巻く環境が厳しさを増している。こうした中、本県では流域・公共、県下水道局・市町村・組合という立場を超え、共通する課題に広域的に取り組む場として、平成28年11月に「下水道事業推進協議会」を立ち上げた。 ○ 現場を有し維持管理や建設に関する経験・ノウハウのある県下水道局が先導的な役割を果たすことで、実効性の高い取組へとつながっている。 ○ 3つの共通する課題を選択し分科会を立ち上げたが、取組は他の課題にも広がっている。 ○ 成果として、流域下水道施設の運転余力を活用し単独公共下水道の脱水汚泥を受け入れる「下水汚泥の共同処理化」を実現した。県内では初の取組である。 ○ 下水処理以外でも、危機管理対応に関する連携や市町村への技術支援でも取組が進んでおり、協議会が共通する課題を解決するプラットホームの場として進化している。 |
内容 |
【施策の背景】 1 下水道事業を取り巻く環境 ・ 人口減少社会の到来 人口減少により、事業収入が減少し、今後は下水道事業の経営環境が厳しさを増すことになる。 ・ 下水道の使命の変化 近年の気候変動等に伴う大規模災害の発生リスクの増大、施設の老朽化によるインフラメンテナンスの推進、下水汚泥の資源化などによる環境対策など、下水道を取り巻く社会情勢や下水道が果たすべき役割が変化している。 ・ 国の動向 総務省通知、平成26年8月29日付け「公営企業の経営に当たっての留意事項について」では、下水道事業について、重点的な取り組みを求めており、健全な企業経営の確立を強く求めている。 また、改正下水道法(平成27年11月施行)で、下水道管理者同士の広域的な連携を促進し、効率的な施設整備を行うことを目的に、新たに「協議会」の規定が設けられた。 2 本県の状況 ・ 下水道を取り巻く諸課題に対し、各下水道管理者は限られた人員と財源で適切に対応していかなければならない事業環境にある。 ・ 今後、人口減少社会の進展により収入減少が見込まれ、経営環境は厳しさを増すことが想定される。 ・ 厳しい事業環境にあっても、各下水道管理者は将来にわたり必要な下水道サービスを安定的に供給していく責務がある。 ・ 流域人口が540万人を擁し、県下水道局、市町村、下水道公社の広域的な取り組みが必要かつ効果的。 【下水道事業推進協議会の設立】 ・ 上記のとおり、各下水道管理者や下水道に関わる関係者は、直面する諸課題に対して、連携して取り組む必要があるとともに、国も下水道管理者同士の連携を後押ししている。 ・ そこで、県内の下水道事業の現状や課題を共有し、共通する課題を広域的に取り組む場として「下水道事業推進協議会」を設立した。この取組は総務省が進める下水道の公営企業化に向けた取組にもつながる。 ・ 構成団体メンバーは、県、県内全市町村(59団体)、下水道公社で、流域関連市町だけでなく、単独公共市町や下水道事業未実施町村も参加。 ・ 設立にあたっては、建設や維持管理の現場を有し、これらに関する経験・ノウハウを有する、県下水道局が先導的な役割を果たした。 【取組課題】 市町村に対しアンケートを実施し、以下の3課題について、分科会により課題を共有し取り組むこととした。 1 経営管理 処理原価など検討ベースとなる事項を把握、団体間比較等を行い、経営課題を整理し、財政負担のあり方や法適化などの各団体が直面するテーマを抽出。他の事例を参考にしながら有効策を検討する。 2 災害時対応への取組 下水道BCP訓練を共同で実施し課題や解決方策を共有。さらに、ブラッシュアップし、相互の連携強化を図る。 3 下水汚泥の共同処理 単独公共下水道から発生する汚泥を流域下水処理場で受け入れ焼却等の処理を行い、市町の負担軽減及び流域下水道事業の経営・施設の効率化を図る。 【取組による成果】 1 災害時対応に関する連携 ア 災害復旧の広域支援体制の構築 (取組前) ・ 被災した場合は各下水道管理者が応急対応するが、下水道管理者からの依頼を受けて応急対応に当たる(公社)日本下水道管路管理業協会は、一度には対応できない。 ・ 同協会では、取り組むべき業務の優先順位を判断できないため、効率的な復旧につながらない状況であった。 (協議会の取組) a 協定の名称 「災害時における埼玉県内の下水道管路施設の復旧支援協力に関する協定」の締結 b 締結者 埼玉県下水道局、下水道事業を実施している県内全市町・組合 56団体、公益社団法人日本下水道管路管理業協会 c 協定のポイント ・ 締結者各々が十分な応急対応を実施することが出来ない場合において、(公社)日本下水道管路管理業協会に対し支援を要請できる。 ・ 要請を受けた協会は、広域的なネットワークを活用し迅速な復旧を支援。 ・ 県下水道局が支援要請の窓口となることで、協会にとっては窓口が一本化されるとともに、優先順位が示された支援要請となることから、効率的な復旧支援が可能となる。 イ 実践的な災害訓練の継続 (取組前) ・ 県と市町組合で連携して訓練を実施していたが、訓練を通じて実感した課題等を共有する場が欠如していた。また、広域的な視点を持つ意識が十分ではなかった。 (協議会の取組) ・ 毎年度実働訓練を行うことで、課題の共有をはじめ、流域・公共、県下水道局・市町組合の立場を超えた対策の検討、団体間の連携など、様々な面で拡がりを見せた。 ・ 平成30年1月には、図上訓練を初めて実施した。内容は、事前にシナリオが提示されず、与えられた情報から意思決定まで行う実践的なものであった。さらに、県内市町組合を含めた一括の支援要請や広域応援受入れまでもが訓練内容として盛り込まれ、より実践的でレベルアップにつながった。 ウ 下水道BCPの共有 (取組前) 各団体で下水道BCPを策定しているが、そのような中、平成28年4月に熊本地震が発生し、その有益性が改めて評価された。 (協議会の取組) 協議会が共有する場となったことで、それぞれの団体が策定した下水道BCPをブラッシュアップすることができた。 2 下水処理に関する連携 ア 下水汚泥の共同処理 単独公共下水道から発生する汚泥を流域下水処理場において焼却等の処理を行い、市町の負担軽減及び流域下水道事業の経営・施設の効率化を図る。 (取組前) ・ 県内に単独公共下水道が14団体あるが、施設の老朽化や汚泥処分先の確保が共通の課題である。 (協議会の取組) 流域下水道にとっては焼却施設の稼働率の向上、新たな収入の確保、単独公共下水道にとっては汚泥処分費用の低減、新たな汚泥処分先の確保が見込まれる。双方に有益なことから、協議を進め、平成30年4月から3市・組合との間で共同処理をスタートさせた。 イ 農業集落排水施設の公共下水道への接続(広域化) (取組前) ・ 県内に農業集落排水処理区が143地区ある。いずれの団体も施設の老朽化及び改築費用の低減、人口減少による処理水量の減少が課題である。 (協議会の取組) 流域関連市町が所管する農業集落排水施設の流域関連公共下水道への接続に関して、関係機関との協議を進めている。 関連市町にとっては、施設改築費用の削減につながり、県にとっては、処理水量の増量につながる取組であり、双方にとって、WINWINの取組となる。 早い地区では平成32年度からの実施となる。 3 市町村への技術支援 (取組前) 技術職員が減少しており、市町村では、修繕や点検など業者の提案内容の妥当性を十分に判断できない。 (協議会の取組) 流域下水道施設の維持管理に関する知識・経験を有する下水道公社が技術面で市町村の支援にあたることで、それぞれの市町村の実情に応じた支援が可能となるとともに、公共下水道に係る維持管理費用が抑制できる。 4 協議会の進化 お互いの顔が見える関係が構築できたことで、協議会が共通課題を認識し、対応方法を研究・検討する場から、共通課題を解決するためのプラットホームの場へと進化している。 さらに、実効性の高い広域的な実働訓練の実施、下水汚泥の受入団体拡大、下水道事業の執行体制に係る国への提言などの取組が鋭意進められており、さらなる広域連携を進めていく。 |
関連 ホームページ |
http://www.pref.saitama.lg.jp/c1501/mottogesuido/geuidouzigyousuisinnkyougikai.html |
本件問合先 | 下水道局下水道管理課 |
048-830-5440 | |
a5440@pref.saitama.lg.jp |