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タイトル 地元高専と農業イノベーション! ~誰でも簡単、(ぶどう・トマト)DIY型システムの開発~
施策・事業名称 みまさかの国ぶどうスマート農業普及推進事業、岡山県スマート農業技術等開発支援事業
都道府県名 岡山県
分野 農林水産
事業実施期間 令和3年4月1日~
施策のポイント ・農産物の生産性及び品質の向上を図るため、農業者、地元工業高等専門学校、県農業普及指導センター等でコンソーシアムを構築し、安価で農業者自らが製作可能なDIY型のシステムを開発した。
・センター職員が、これまで農業との関わりが薄かった高専と情報工学分野の専門知識を有していない農家との橋渡しを行い、スムーズな開発につなげた。
内容 1 ソリューション開発に着手した経緯・動機
(1)DIY型ハウス内環境遠隔制御システム<ぶどう>
くだもの王国岡山を代表するぶどうは、首都圏、関西圏への販路拡大や海外での需要が堅調であり、岡山県では、高品質な県産ぶどうのさらなる供給力強化を図るため、面積拡大と担い手の確保・育成を総合的に進めている。
安定した経営を確立するためには、規模拡大が不可欠だが、大規模経営において、高品質生産を維持するためには、栽培管理の省力・軽労化やリモート化の実現が必要である。
(2)DIY型自動集計秤<トマト>
トマト栽培の安定経営において、多品種を栽培し、市場の多様なニーズに応じるためには、日々の収穫量等を迅速かつ正確に把握し、栽培管理に活用することが重要だが、品種ごとの計量や記録、集計には多大な時間と労力を要するため、自動集計秤等、省力化技術の導入が必要である。

2 ソリューション開発の過程
農業分野におけるDXを進めるという目標のもと、農業者、地元工業高等専門学校、県農業普及指導センター等でコンソーシアムを構築し、ぶどうとトマト栽培に関するシステム開発等に取り組んだ。
(1)DIY型ハウス内環境遠隔制御システム<ぶどう>
農作業の省力化・軽労化に加え、生育状況や気象変化に対応したきめ細かな環境制御による農作物の品質向上につなげるため、施設内環境をモニタリングし、ハウス内張カーテン等の開閉やかん水弁をスマートフォン等で遠隔操作できる低コストなDIY型システムの開発を目指した。
・市販のシステムを活用し、ハウス内環境を遠隔監視・制御できるシステムをDIY型により安価に構築
・農業者がDIYで組み立てや操作・設定できるよう、分かり易いマニュアルや組み立て手順を説明した動画を作成
(2)DIY型自動集計秤<トマト>
地元工業高等専門学校、農業者及び県農業普及指導センター等が連携し、「安価な製品づくり」をコンセプトに、学生の卒業研究テーマとして、DIYによる開発を進めた。
・計量器やタブレット端末、バーコードリーダー等の機材はすべて安価な市販品を利用することで低コスト化を目指した。
・これらの機材と、学生が作成した独自のアプリを組み合わせることで自動集計秤を製作した。
・自動集計された収穫量は、品種ごとにグラフ化され、スマートフォン等でリアルタイムに把握することができる。

3 完成に至るまでに直面した問題・課題、その解決方法
地元工業高等専門学校の学生は、これまで農業との関わりが薄く、一方で、多くの農業者は情報工学分野の専門知識を有していなかった。そのため、互いに求められていることを理解しにくい状況にあったが、県農業普及指導センターがコーディネートすることで互いの理解が深まりスムーズに開発が進んだ。
(1)DIY型ハウス内環境遠隔制御システム<ぶどう>
環境遠隔制御システムに魅力を感じる農業者は多い反面、マニュアルが膨大なボリューム(約150ページ)であり、農業者には難解であった。
そこで、地元工業高等専門学校と協力して、組立方法をわかりやすく説明した製作動画(約60分)や簡易な操作・設定マニュアルを作成し、農業者が理解しやすいものとした。
(2)DIY型自動集計秤<トマト>
計量器として利用した市販デジタル体重計は、センサーが収穫コンテナを感知せず、計量ができなかった。
そこで、試行錯誤を重ねた結果、体重計の測定表面に人体の電気抵抗値に近い金属線を配線することで収穫コンテナによる計量を可能とした。

4 ソリューション完成後の成果や効果
(1)本県農産物のさらなる高品質化や供給力強化につながる。
ア DIY型ハウス内環境遠隔制御システム<ぶどう>
・DIY型の環境制御システムは安価(通常の約1/4)に導入でき、農業者自らが製作やメンテナンスをすることができる。
・環境制御システムを活用した遠隔操作により、栽培管理作業時間が短縮した(省力・軽労化)。
・ハウス内環境のきめ細かな環境制御により、高品質化につながる。
イ DIY型自動集計秤<トマト>
・品種ごとの収穫量を、迅速かつ正確に把握することができる自動集計秤を安価に製作することができた。
・品種ごとの集計データを基に、収量が多く、需要の高い品種に絞った栽培計画を立てることができ、新たな販路開拓につなげられるなど、効果的なマーケティングが可能となった。

(2)共同開発に携わった学生にとって、地域課題の解決に自らの技術を生かすことで自信につながるとともに、これまで関わりが薄かった農業を知る機会となり、将来の職業選択肢を広げるきっかけにつながった。

5 横展開に当たってのアドバイスや共同利用可能性
加温栽培ハウスに環境制御システムを導入する場合は、各地域の気象や土壌条件、栽培方法が異なるため、データを集積し、導入地域の条件に適応した設定値を決定するための分析が必要である。
環境制御システムの導入を、DIYで行うことで、現在多くの産地で利用されている既製品の環境制御システムよりも非常に安価に導入することが可能である。
ぶどう加温栽培ハウスシステム
ぶどう加温栽培ハウスシステム
トマトの自動集計秤
トマトの自動集計秤
本件問合先 岡山県 美作県民局 農林水産事業部 美作広域農業普及指導センター
0868-23-1525
tsuya-fukyu@pref.okayama.lg.jp