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タイトル | 技能継承!若手を育てるICT~DXでベテランのノウハウをマニュアル化~ |
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施策・事業名称 | 「農作物生育障害診断アシストシステム」の開発・活用 |
都道府県名 | 岡山県 |
分野 | 農林水産 |
事業実施期間 | 令和2年4月1日~ |
施策のポイント | 県農業普及指導センターの普及指導員(以下「普及指導員」)の急速な世代交代の中、農作物生育障害診断技術の効率的・効果的な継承のため、過去の診断事例を簡便に活用できる診断事例データベースと視覚的に判定できる診断マニュアルで構成する「農作物生育障害診断アシストシステム」を開発し、普及指導員の診断スキルの習熟を加速化させ、指導力の向上と現場指導の迅速化を図っている。 |
内容 |
【1 システム開発の経緯・動機】 当県の普及指導員の年齢構成は若手層とベテラン層で2極化し、今後、世代交代が急速に進み、産地づくりや栽培指導の必須スキルである生育障害診断技術の継承が喫緊の課題となっている。 一方、農業・農村の課題が多様化する中、ベテラン普及指導員が十分な時間を確保して若手普及指導員に初歩からノウハウを伝授することが容易でなくなっている。 このため、ベテラン普及指導員に過度に頼ることなく、デジタル技術を駆使して、若手普及指導員が農作物生育障害診断技術を習得でき、すぐに実践できるシステムを開発することとした。 【2 開発の過程】 (1)開発方針 長期間活用することを念頭に、運用コストが安価で、かつ内容のブラッシュアップが容易になるように外部委託せず、職員による開発とした。 (2)プロジェクトチームの設置 まず、農業革新支援専門員、農業研究所研究員、ベテラン普及指導員、採用2~4年の若手普及指導員で構成するプロジェクトチームを設置した。(農業研究所:県農林水産総合センター農業研究所) チームで、若手がどのような点で診断に悩んでいるか、つまずきやすいか等、徹底的に実態を洗い出し、技術習得のニーズと作成するコンテンツが乖離しないよう留意した。また、若手普及指導員の利用に特化した内容にするべく、過剰な解説を省き、実践的な診断に必要なポイントを議論し、データ整理することに注力した。 (3)「診断事例データベース」の作成 農業研究所の研究や、普及指導センターから依頼された過去11年間の膨大な病害虫診断と生理障害診断の診断結果、写真及びその後の経過(11年間の診断事例2,367件)を再整理し、簡便に活用できるようにデータベース化した。 (4)「診断マニュアル(動画含む)」の作成 マニュアルは、視覚的に理解しやすいよう、図と写真を多用し、基礎、各論、情報に分類したコンテンツ37点を作成し、症状から原因にたどれるようフローを示した。 動画コンテンツは、病害、虫害、土壌調査、土壌分析に分類した52点を作成し、市販されている図鑑などではわかりにくい診断の技法を撮影し、初めて診断する若手普及指導員が1人でも習得できるようにした。また、失敗しやすい作業工程や診断事例を具体的に整理して解説に盛り込むなど工夫した。 【3 完成までの問題と解決方法】 (1)若手普及指導員の意見収集 プロジェクトチーム会議はそれぞれがしっかり意見を出し、深い議論ができるよう参集方式とし、過去、普及指導員の経験がある研究員、革新支援専門員等が若手普及指導員に質問を投げかける手法によって、円滑に意見を引き出し、問題点を明確に整理した。 (2)プロトタイプ版の改良手法 令和2年度からプロトタイプ版で試行を行うことで、若手普及指導員などから広く意見を聴取し、ニーズに沿ったマニュアルになるよう改善を繰り返した。 さらに、農業現場でも視覚的に活用できるよう、インターネット利用のタブレット端末に対応させるとともに、全コンテンツにショートカット用の二次元コードを設置するなど、利用面での改善を続けている。 【4 完成後の成果】 (1)若手普及指導員の指導力向上 当システムを活用した診断により、早期に解決する件数が拡大し、農家満足度の向上につながっている。 (2)若手普及指導員のモチベーション向上 診断技術の習得が早まることで、自信と達成感が高まり、業務に対するモチベーションの向上につながっており、ベテラン普及指導員の負担軽減にも寄与している。 (3)農業研究所の診断件数の軽減 若手普及指導員が生育障害診断スキルを早期に身につけることができ、農業研究所への診断依頼件数が約2割減少(試行前の年間114件からシステム導入後(令和2~4年)は年平均94件)した。 なお、これらの突発的な診断依頼が減少したことで、計画的な試験研究の遂行にもつながっている。 【5 横展開のアドバイス】 本システムは、プログラミングを必要とせず、メニューから習得項目別の資料PDFや動画ファイルにリンクしたシステムで、ファイル保存領域があれば動作するシンプルなシステムであるため普及性が高い。さらに、このシステムを拡張して、営農指導員向けなどの農業技術習得システムが開発可能である。 ![]() ![]() ![]() ![]() |
本件問合先 | 岡山県農林水産部農産課 又は 岡山県農林水産総合センター普及連携部 |
農林水産部農産課:086-226-7421 岡山県農林水産総合センター普及連携部:086-955-0275 | |
農林水産部農産課:nosan@pref.okayama.lg.jp 農林水産総合センター:nousou@pref.okayama.lg.jp |