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タイトル 農業×デジタル 匠(熟練農家)の技術を次世代へ!
施策・事業名称 匠の技伝承実証事業
都道府県名 佐賀県
分野 農林水産
デジタル
事業実施期間 令和元年7月12日~
施策のポイント  本取組は、デジタルを活用することで、これまで次世代への継承が難しいとされてきた「匠(熟練農業者)」の技術を新たな担い手と共有することを可能にした。全国的にも農業者が減少する中、新たな担い手が高い生産性を実現することで産地の成長に繋がるとともに、デジタル化や稼ぐ農業の実現により農業の魅力を向上させ、次の世代が農業へチャレンジする契機を創出した。
内容 ⅰ職員又はグループがソリューション開発に着手した経緯・動機背景や着眼点、課題や問題点、発想や対応の変遷等

 佐賀県では、少子高齢化に伴い農業者が減少する中、県内の匠が生涯をかけて築き上げた優れた技術の喪失による産地の衰退、農産物供給の不安定化が危惧される状況となっていた。また、匠の技術は経験や勘に基づくものが多く、習得に長い期間を要していた。
 そこで、全国トップレベルの収量を誇るキュウリの匠の技術をデジタル化し、そのデータをもとに学習システムを開発。新たな担い手がシステムを活用して早期に技術を習得することで、稼ぐ農業を実践し、産地の維持拡大を図ることを目標として、取組を実施した。

ⅱソリューション開発の過程開発等に際しての具体的な取組内容や創意工夫したエピソード等

1)取組体制
 ・熟練農業者(匠):技術提供
 ・大学、IT企業:データ収集・システム開発
 ・JAさが:産地との調整
 ・県:全体調整、産地における実証・システム活用支援
 ・実証フィールド:JAさがきゅうりトレーニングファーム(就農希望者研修拠点)

2)取組内容
(1)学習システムの開発(R元~3年度)
 ①匠技術の抽出・分析:匠の考えを可視化し、新たな担い手と共有できるようにするため、農作業を「状態把握」、「判断」、「作業」の3段階に分けて、匠が圃場や作物から感じ取る状態把握と、その状態把握に対する判断を「気づき」として計測し、研修生との違いを比較分析して匠技術として整理
 ②匠技術のデータ収集:匠の目線、判断ポイントを動画、テキストなどでデータ化
 ③収集したデータを活用して学習システムを構築
(2)システムの評価・検証(R3年度)
 ①システム学習効果の検証
(匠と研修生の生育状態判断一致率)
 【学習前】44%
 【2週間学習後】69%(1.6倍)
 ・システムを活用したことで、短期間で農業研修生の状態判断力が向上した。
 ②システム利用者へのアンケート結果
 ・満足度:100%(実証協力者7名中)
 ・利用者からは、「キュウリの栽培は1年に2回しか経験できないが、学習システムは何回も見直して復習することが出来る」、「キュウリの見方、栽培に対する考え方が変わった」等と好評価を得た。
(3)学習システムの活用(R4年度~)
 ・農業振興センターへ学習システムアプリを搭載した専用タブレットを配備し、管理責任者を置いて県内産地での運用を図った。
(研修会開催数・システム利用者数(累計))
 ・R4年度:10回・125名
 ・R5年度:13回・166名

3)創意工夫した点
・本取組により開発したシステムは、単なる画一的なプロセスのマニュアルではなく、匠の長い経験に根差した状態把握や判断に着目し、デジタル技術によって分かりやすく形式知化したことで、これまで農業において継承が難しいとされてきた「状況に応じた判断力」の効率的な習得を可能とした。
・匠技術のデータを収集する際、撮影する天候、時間帯、画角などを試行錯誤しながら膨大な数のデータを取得し、匠とともに1つずつ確認、整理したことで、匠が圃場や作物から感じ取る状態把握を学習システム上のデータで再現することができた。

ⅲ完成に至るまでに直面した問題・課題、その解決方法アイデアを具現化するに当たって苦労した点やその解決方法等

 経験や勘に基づく匠の技術を言葉で説明することは容易でなく、行き詰まる場面も多かったものの、産地の持続的な発展のため次世代へ技術を継承するという匠の想いを関係者が共有し、匠への密着や関係者による検討を何度も重ねて粘り強く取組を進めることで、形式知に落とし込むことができた。また、その際、異なる分野の専門家が様々な角度からアイデアを出し合ったことで、農業未経験の研修生も理解しやすいシステムの開発に繋がった。

ⅳソリューション完成後の成果や効果解決された社会課題、業務効率化の内容等

1)匠の技術を習得した新規就農者が高収量を達成
(新規就農者8名の10a当たり平均収量)
 ・年間収量:35t/10a(県平均収量の1.6倍)
 ・就農2年目の新規就農者が、県内トップクラスの成績で県共進会の最優秀賞及び優秀賞を受賞。
2)産地の拡大
(産地における年間キュウリ販売額)
 【取組前】6.5億円/年
 【取組後】10.3億円/年
 【得られた効果】匠の技術を習得した新たな担い手の活躍により、販売額が1.6倍増加
 ・若い農業者が匠の技術を効率的に習得することで、高い生産性で稼ぐ農業を実践し、その姿を見た次の世代が新たに農業にチャレンジするような好循環を創出した。
3)地域の魅力向上
(産地の新規就農者数)※R5年度末時点
 ・県外からの移住就農者数:3名(Uターンを含む場合6名)
 ・非農家の就農者数:9名
 ・「稼ぐ農業」が地域の魅力向上の一助となり、県外や非農家からも新たにキュウリ栽培を志す研修生が生まれており、産地の持続的な発展に繋がっている。

ⅴ横展開に当たってのアドバイスや共同利用可能性他団体に横展開する際の注意事項や、共同クラウド利用の可能性等

 本取組において開発した学習システムは、知的財産保護の観点から、県内で活用を図っていくこととしている。

資料 匠の技伝承実証事業.pdf
関連
ホームページ
https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/digitaldenen/koshien/honsen/2023/0009.html
本件問合先 佐賀県園芸農産課
0952257114
engeinousan@pref.saga.lg.jp